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[3Gp-06] 干ばつストレスが馬鈴薯デンプンと物性に及ぼす影響
キーワード:馬鈴薯、干ばつストレス、デンプン代謝
【目的】干ばつは農作物の生育や収量に大きな影響をもつ環境ストレスの一つである。馬鈴薯 (Solanum tuberosum L.) においては特に2021年度の北海道での高温と少雨により生育阻害や収量の低下など大きな被害を受けた。こういった被害を減らすために干ばつに強い馬鈴薯品種の育成や栽培法の確立が必要であるが、馬鈴薯の収量と干ばつストレスの関係性については不明な部分が多く残っている。そこで我々は、干ばつストレスによる馬鈴薯塊茎の表現型の差を遺伝的に評価することを目的として試験を行った。【方法】加工用品種である「さやか」の種芋を半割して、一方を十分に給水した対照区 (CT) 、他方を塊茎形成時期に給水を停止した干ばつストレス区 (DS) としプランターで栽培した。約4ヶ月栽培した後に塊茎を収穫し、重量、クリープメーターでのテクスチャー分析、ヨウ素染色でのデンプン粒計測、qPCR法による遺伝子発現量の解析を行った。【結果】植物一株あたりの塊茎の総重量は、CTと比較してDSで減少が認められた。塊茎髄部のテクスチャー分析では、CTと比較してDSは最大荷重、総エネルギー量が低く、破断歪率が高い結果となった。ヨウ素染色を用いた顕微鏡観察ではCTとDSのデンプン粒面積の中央値を比較するとDSがCTの約2割減少していた。これらの差の要因となる遺伝子を調べるため、我々は干ばつストレスマーカー遺伝子およびデンプン代謝に関わる遺伝子のqPCRを行い、遺伝子発現量を評価した。DSでは干ばつストレスマーカー遺伝子であるHSP70, TAS14, RAB18に加えて、デンプンの分解に関わる遺伝子であるDPE2, AMY23, BAM9の発現量の上昇が認められた。このことから、干ばつによりデンプンの分解が促進され、デンプン粒が小さくなり、塊茎の硬度に影響を及ぼした可能性があると考えられる。