日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3La] 発酵、酵素利用

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 L会場 (2F N205)

座長:小林 元太(佐賀大学)、成澤 直規(日本大学)、藤田 智之(信州大学)

09:45 〜 10:00

[3La-04] 麹菌熟成チーズに適する新規なAspergillus属菌株の探索とその特性評価

*冨田 理1、鈴木 聡1、林田 空1、萩 達朗1、小林 美穂1、野村 将1、荒川 洋亮2、三浦 孝之3、山下 秀行4、楠本 憲一5、佐藤 薫3 (1. 農研機構 食品研究部門、2. 蔵王酪農センター、3. 日本獣医生命科学大学、4. 樋口松之助商店、5. 大阪大学)

キーワード:発酵食品、表面熟成チーズ、Aspergillus属麹菌、メタボローム解析

【目的】これまでに、伝統的な麹菌を活用した新規な表面カビ熟成チーズ「麹チーズ」を開発し1)、麹菌選抜株(KC43, KC41)がもたらす含有成分の特徴を明らかにした2)。本研究では、異なるスターター麹菌を用いることによって麹チーズに新たな特徴を付与することができると考え、さらなる熟成チーズ用麹菌株の探索を行った。
【方法】5菌株のスターター候補株(Aspergillus oryzae)を用いて熟成チーズを調製し、水溶性・揮発性成分のメタボローム解析、酵素活性測定、物性の測定等に供し、既存選抜株との比較を行った。
【結果】旨味に寄与する遊離アミノ酸はチーズ中プロテアーゼ活性に関連して一様に増加した一方、遊離脂肪酸、メチルケトン、2級アルコール、1-オクテン-3-オールなどの蓄積には大きな菌株間差が生じた。また、一部の候補株にはKC43とKC41にみられない化学的特徴が確認され、華やかな果実香に寄与する脂肪酸エチルエステルや、血中脂質・コレステロール低減作用が報告される3-ヒドロキシ-3-メチルグルタル酸の顕著な蓄積が明らかとなった。また、チーズ組織の固さ(物性測定の最大応力値)にも菌株間の大きな差が認められ、KC43とKC41がやや固い組織を示したのに対して、一部の候補株では軟化の傾向がみられた。本研究により、麹チーズに新たな風味、テクスチャ―、付加価値をもたらす可能性のある、複数の新規熟成チーズ用麹菌株の選抜に至った。
  1) 特開2021-129536、佐藤薫ら「麹菌による熟成チーズおよびその製造法」
  2) Tomita et al. (2022). Food Research International, 158, 111535-111535.