日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3Lp] 食品物性

2024年8月31日(土) 14:30 〜 16:30 L会場 (2F N205)

座長:藤井 修治(東洋大学)、小川 剛伸(京都大学)

15:45 〜 16:00

[3Lp-05] 振動ずり変形下によるあんこの降伏挙動

*藤井 修治1 (1. 東洋大学)

キーワード:あんこ、レオロジー、ジャミング

目的:
あんこはでんぷん粒子が密につまった粉体系の食品である。でんぷん粒子の充てん構造に着目し、粉体充てん構造のどのような構造変化が降伏挙動を引き起こすのかを明らかにすることを目的とし、粘弾性測定と顕微鏡観察の同時計測により調べた。

方法:
市販のこしあんを試料とした。応力制御レオメーターMCR302(Anton Paar MCR302)で動的粘弾性計測をおこなうと同時に、顕微鏡ででんぷん粒子の充てん構造を観察した。振動変形下において充てん構造変化を追跡するのは困難なため、振動ひずみがゼロになる瞬間の画像のみを取得し、ゼロひずみ点での充てん構造が振動ひずみ回数とともにどのように変化していくのかを調べた。

結果:
非線形挙動が開始するひずみ振幅において、でんぷん粒子の充てん構造がわずかに変化しはじめ、ひずみ振幅の増大とともに充てん構造は大きく乱れていった。充てん構造の乱れは不均一であり、大きく乱れて流動化する領域と、大きなひずみ振幅でも充てん構造がほとんど乱れない固体的領域が観察された。この固体的領域では、でんぷん粒子密度が増すジャミング転移的な挙動が観察された。定常せん断でも同様の構造転移がおきると予想し、定常せん断下で粘度計測を行ったところ、粘性率がせん断速度とともに増大するシアシックニング挙動が観察された。せん断変形が粒子のジャミング転移(高密度化)を誘起することが、あんこの食感にも影響すると考えられる。