日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3Mp] 鮮度保持、資源循環、その他の食品工学

2024年8月31日(土) 14:30 〜 17:00 M会場 (2F N203)

座長:勝野 那嘉子(岐阜大学)、進藤 穣(鹿児島大学)、濱本 博三(名城大学)

15:30 〜 15:45

[3Mp-05] 超高電界パルスを用いた酵母内機能性分子の非破壊抽出

*橋迫 大翔1、樋口 正守1、勝木 淳1 (1. 熊本大学大学院)

キーワード:酵母、非破壊、抽出、高電界パルス、機能性分子

目的
酵母及び抽出されたタンパク質は,食品,飼料,化粧品,医薬品といった広い分野で利用されているが,タンパク質の抽出には,酵母の強固な細胞壁を破壊するための技術が必要であり,既存の抽出方法では高分子タンパク質の抽出が困難となっている.しかし,高電界パルス(PEF)を用いるPEF法は物理的かつ非加熱的に細胞膜の透過性を上昇させることができるため,高分子タンパク質を非破壊で抽出できる可能性がある.これまでの先行研究では,PEF法によって細胞膜を破壊できることは確認できているものの細胞壁の破壊までは難しく,タンパク質抽出量が少ない結果となっている.また,抽出したタンパク質の機能性の有無に関してもまだ調べられていない.よって本研究では,より強力なPEFを用いて酵母内機能性分子を大量に抽出すること,抽出した分子の機能性の有無を確認すること,そしてPEF法の抽出特性を調べることにある.
方法本研究では,125 kV/cmまでの電界を印加し,細胞壁の破壊及びタンパク質抽出量の増加を目指した.本実験を行うにあたって培養方法,菌濃度の測定方法を確立し,電磁界計算による電界分布の検討を行った.さらに,125 kV/cmまでの電界印加時の電子顕微鏡による細胞の様態観察を始め,電気泳動による抽出物の解析,BCA法によるタンパク質抽出量の調査,タンパク質の機能性について調査を行った.
結果75 kV/cm以上のPEFを印加することにより,酵母から大量のタンパク質を抽出することが出来た.また電気泳動による抽出分子の分析と機能性解析の結果,抽出したタンパク質の中で機能性を損なわずに抽出できているものがあることも分かった.そして電子顕微鏡による様態観察では,本研究のPEFによって細胞壁に大きなダメージが与えられていることが示唆された.