アップデートセミナー①
認知症高齢者に対する秋田版認知活性化療法(CST)
「60年前の秋田」の紹介
作業療法士
浅野 朝秋
(秋田大学大学院医学系研究科)

認知活性化療法(CST)は認知的刺激を用いて、主に意思疎通の改善を通じてwell-beingを向上する手法です。Woodsらが現実見当識訓練の行き詰まりに対する反省を踏まえ2000年代にエビデンスが確認された複数の手法と回想法を組み合わせて開発したものでPerson-Centered Careの理念にも基づいています。2015年に日本版標準プログラムがリリースされましたが、ここでは秋田版にアレンジした「60年前の秋田」を紹介します。
発達障害のリハビリテーション
ペアレントトレーニングの実践
作業療法士
石附 智奈美
(広島大学大学院医系科学研究科)

発達障害のリハビリテーションにおいて保護者支援は欠かせません。しかし、実際は子どもたちとのセラピーに多くの時間が割かれ、保護者支援が十分に出来ていると感じているセラピストは少ないと思われます。20年ほど前からペアレントトレーニングを実践してきて、保護者支援の有用性を実感し、またそのノウハウも蓄積してきました。本セミナーでは作業療法士ならではのペアレントトレーニングをご紹介させて頂きます。
精神障害領域の認知機能評価(UBOM)
作業療法士
稲富 宏之
(京都大学大学院医学研究科)

精神障害のある人の生活のしづらさを改善していくためには当事者との共同意思決定(SDM)が欠かせない。このため、当事者の経験と価値観を尊重する関り方と、障害性を改善するための医療スタッフ側からの提案のしかたに一工夫がいる。この一工夫には、いつでもどこでも短時間で負担が少なく身近な道具を用いて実施できるツールが精神科作業療法士に求められる。この一例として臺式簡易客観的精神指標検査(UBOM)があるので紹介する。
訪問リハにおける作業療法の可能性について
作業療法士
宇田 薫
(医療法人おもと会)

今では多くの作業療法士が訪問業務に携わるようになったが、何年経っても「利用者の主体性を引き出せない」「連携がとれない」等という課題が解決しない。本セミナーではそれらの課題の解決の糸口を見いだし、訪問リハにおける作業療法の可能性を広げ、実践につなげていただけるような時間としたい。また、「生活行為をマネジメント」する私たち作業療法士のワークライフバランスやワークエンゲイジメントについても一緒に考えてみたいと思う。
作業療法士の新しい視点が対象者の「食べる」を支える!
作業療法士
太田 有美
(一般財団法人津山慈風会 津山中央病院)

作業療法士による食べることへの支援は、ADL訓練の一環として古くから行われてきました。しかし、作業療法の専門性がより明確化されてきた現代では、対象者にとって食べることに対する目的や価値に焦点を当てた介入が重要と考えています。今回は、作業療法士ならではの視点による包括的な支援ができるよう、介入事例をご紹介いたします。今回のセミナーが、作業療法士として食に対する視点をアップデートする機会になれば幸いです。
高齢者の認知機能の評価
公認心理師・臨床心理士
大庭 輝
(弘前大学大学院保健学研究科)

高齢者の方の認知機能評価にはMini-Mental State Examinationや長谷川式簡易知能評価スケールなどが用いられることが多いと思います。今回本セミナーにご参加の皆さんも日々の業務の中で使用しているかもしれません。こうした認知機能評価の結果を実践にどのように活用しているでしょうか?点数だけ出して終わりになっていないでしょうか?本セミナーでは、高齢者の認知機能をどのように評価すればよいか、心理学の視点から解説します。また、私たちが開発した日常会話の中から認知機能を評価することができるツールである日常会話式認知機能評価CANDyを紹介します。
半側空間無視症状を呈する方に対する作業療法
作業療法士
大松 聡子
(国立障害者リハビリテーションセンター病院)

半側空間無視は近年、注意ネットワークの障害として捉えられており、その意味合いは無視症状を単に空間性情報処理の問題として捉えるのではなく、注意障害や視空間性ワーキングメモリの停滞などの左右空間に依存しない非空間性注意機能との関連性から捉え、病態を明確にすることにあるだろう。無視症状を呈するクライエントの状態は一見すると複雑難解であるが、包括的な病態解釈を行い、適宜難易度設定を行いながら本人の病識に応じてモチベーションを維持できるような働きかけを選択していくことが可能と思われる。
3Dプリンターを使った片手で出来るプロダクト作製について
作業療法士
川口 晋平
(社会福祉法人柏芳会 田川新生病院)

3Dプリンターをつかった片手で出来るプロダクトの製作や過程、想いについてお話したいと思っています。私の経歴は大学で建築学を学び、メーカーで3年間働いてきました。リハ業界に入ってから脳卒中の上肢の治療法に着目し、木工で自助具や訓練機器等を作製してきました。偶然、3Dプリンターを購入し、片手で開けられるペットボトルオープナーを作ることになり、それがYahooニュースやニュースゼロに取り上げられ話題となりました。現在では10種類程度のプロダクトを製作し、必要な人に届ける活動を行っています。
認知神経リハビリテーションの理論と作業療法への応用
作業療法士
河野 正志
(医療法人財団北林厚生会 五条山病院)

認知神経リハビリテーションは、イタリアの神経科医Carlo Perfettiによって提唱された認知理論に基づくリハビリテーションです。この理論では、脳損傷後の運動や行為の回復を病的状態からの学習過程とみなし、回復には認知過程の活性化が密接に関わると考えます。本セミナーでは、認知神経リハビリテーションの理論を解説し、作業療法と関連が深い脳卒中後の上肢機能や生活行為の回復に向けた認知過程に介入する手続きについて紹介します。
ハンドセラピィ分野における今後の作業療法
作業療法士
笹原 寛
(社会福祉法人恩賜財団済生会 山形済生病院)

日本におけるハンドセラピストの学会組織は日本手の外科学会から遅れること31年後の1988年に発足した。東北では、1991年に山形で第3回日本ハンドセラピィ学会学術集会が弘前大学医学部附属病院の對馬祥子先生の学会長のもとで開催され、2006年には弘前において東日本で第1回目のハンドセラピィセミナー「基礎コース」が、2018年には第1回東北ハンドセラピィ研究会が弘前で開催された。東北において歴史的にも青森弘前がハンドセラピィのメッカであると言えます。今回はハンドセラピィの歴史と現状について疾患を交えて報告し、これからの課題について述べます。