日本畜産学会第128回大会

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ポスター発表

2. 遺伝・育種

2. 遺伝・育種

[P2-04] 黒毛和種におけるsolute carrier family 12, member 1(SLC12A1)変異(g.62382825G>A, p.Pro372Leu)のホモ接合個体の長期観察

〇長谷川 清寿1、坂本 洋一2、森脇 俊輔2、原 陽子1、濱田 悠太3、佐々木 慎二4,5 (1.島根松江家保、2.島根畜技セ、3.島根病鑑室、4.琉球大農、5.鹿大院連農)

黒毛和種においてsolute carrier family 12, member 1(SLC12A1)遺伝子の劣性変異(g.62382825G>A, p.Pro372Leu)は、胎膜水腫を引き起こし、胎子は妊娠中に死亡する。しかし、我々はSLC12A1の機能不全があるにも関わらず出生、生存する変異型ホモ接合個体1頭を確認した(Hasegawaら2017)。そこで、この変異型ホモ接合個体の長期観察を行った結果、子牛期に明らかな臨床症状を呈さなかったが、軽度のカルシウム尿症が観察された。28か月齢で腎機能障害を呈し、と畜後の病理検査で水腎症が観察された。生後に認められたこれらの臨床経過は、ヒトのバーター症候群の症状と類似していた。また、変異のヘテロ接合型は枝肉成績への効果が認められず、この変異を集団から排除しても黒毛和種の生産に負の影響がないことが分かった。これらのことから、SLC12A1の劣性変異は、胎子期に加え、生後においても個体の健康を害することから、集団から排除しない場合重大な経済的損失を発生させることが明らかとなった。