日本畜産学会第128回大会

講演情報

ポスター発表

3. 繁殖・生殖工学

3. 繁殖・生殖工学

[P3-12] 高グルコース負荷環境がブタ精子をジグザグ運動から直進運動に変化させる

〇梅原 崇1、辻田 菜摘1、古家後 雅典2,1、後藤 雅昭1、島田 昌之1 (1.広島大院統合生命、2.家畜改良事業団)

【背景】精子は,解糖系あるいはミトコンドリアにおいて産生されるATP依存的に精子鞭毛を振幅させる.我々は,解糖系活性の高いブタ精子が,鞭毛を大きく震わせるジグザグ運動を示す一方で,ミトコンドリア活性の高い精子は,クエン酸回路で産生されるイタコン酸が解糖系を負に制御することで,直進運動を示すことを突き止めた.精子は雌の副生殖腺内で運動パターンを変化させながら遊泳していることから,精子運動を制御するATP産生経路が切り替わっていると推察されるが,そのメカニズムは全く明らかとなっていない.そこで本研究では解糖系に着眼し,ジグザグ運動から直進運動へと切り替わるメカニズムを検討した.【結果】グルコースを2 mMあるいは10 mM含む培地でブタ精子の運動性解析を行ったところ,いずれもジグザグ運動が認められた.しかしながら,10 mM環境下では30分以内に細胞内pHが低下し,ジグザグ運動から直進運動へと移行した.さらに,乳酸排出を制御するMCT1阻害剤を添加すると,2 mM区でもpHが低下し,ジグザグ運動が減退した.そこで,フラックスアナライザーを用いた代謝解析を行ったところ,10 mM環境において30分以内にATP産生が解糖系優位からミトコンドリア優位に移行していた.【結論】解糖系に起因した細胞内pHやATP代謝の変化が,ジグザグ運動から直進運動に切り替わるスイッチである.