日本畜産学会第128回大会

講演情報

ポスター発表

5. 畜産物利用

5. 畜産物利用

[P5-18] レトルト加熱牛肉香の畜種差を決める因子

榎本 光洋1、小林 優多郎1、〇松石 昌典1 (1.日本獣医生命科学大学応用生命科学部)

【目的】

演者らは先に、牛肉缶詰のおいしさに寄与するレトルト加熱牛肉香の強度が畜種により異なり、その原因の一つは全糖含量の差にあることを報告した1)。本研究では、糖類の中のどの糖が貢献するのかを調べた。

【材料・方法】

各種糖類は、畜肉から得た試料を塩酸加水分解したのち、3-methyl-1-phenyl-5-pyrazolone誘導体化し、逆相カラムを用いたHPLCで分析した。グルコース(GL)は酵素法で測定した。香気成分は連続水蒸気蒸留で取得してGC-MSで分析した。

【結果】

HPLCで測定した結果、主要な糖は牛肉ではGL、豚肉と鶏肉ではマンノースだった。酵素法でGLを測定した結果、肉試料100g当たり牛肉では0.42 g、豚肉では0.10 g、鶏肉では0.014 g含まれていた。そこで、豚肉に0.32g/100g肉のGLを添加し、添加していない豚肉とで、いずれが無塩せきコンビーフの香りに近いかを比較した結果、GL添加の方が有意に(P<0.01)近いと判定された。また、香気成分分析では、GL添加により3-ethyl-2,5-dimethyl-pyrazineが有意に(P<0.01)増加したことが確認された。以上の結果より、レトルト加熱牛肉香の強さが畜種によって異なる原因の一つはグルコース含量の差によるものであると推定された。

1) 食肉の科学、59、104-105(2018)