第71回コロイドおよび界面化学討論会

第71回討論会開催にあたって

 今回のテーマ「先端計測・解析がコロイド・界面の見え方を変える」では、1981年にG.BinnigとH.Rohrerによって走査型トンネル顕微鏡(STM)が開発され、同85年のBinnigによる原子間力顕微鏡(AFM)の開発を通じ、86年のBinnig、Rohrerに対するノーベル物理学賞授与が齎した偉業に端を発する、ここ40年間における先端計測技術と、多様な解析手法の確立にフォーカスを当てます。一昨年の筑波「分散系、凝集、ソフトマターの科学」、昨年度の70周年記念国際会議「Okinawa Colloids 2019」における本討論会の盛況さは、ミクロとマクロをつなぐ複合的なコロイドと界面のドメインに多様で多彩なダイナミックな世界が広がり、それがサイエンスとしてもまた技術的応用の面からも注目される存在であることを物語っています。コロイド界面化学は吸着現象、エマルションや微粒子分散系、界面活性剤、ミセルなどを扱う伝統的な領域から、物質材料、ナノテク、生体、医療、生物資源、環境など産業と生活基盤の基礎と応用に役立つ総合的なサイエンスとその周辺技術をカバーする総体として成長してきました。
 2011年の東日本大震災からまもなく10年目になる今年、仙台市は、市が主導して復興特区制度を取り入れ、新たな地域産業の開拓を始めとした著しい復興を遂げています。また、仙台は「学都仙台」を掲げ、大学等の高等教育機関に通う学生を85,000人以上抱えており、人口/学生比は全国4位、人口/大学院生比は全国2位を誇るまでに成長しました。そのような仙台市に皆さまをお迎えし、最先端の研究成果をご発表頂き、存分に議論し、発展し続ける仙台市を楽しんで頂こうと準備を進めてきたところですが、今年に入って新型コロナウイルス(COVID-19)が世界的に流行し、私たちの生活に大きな影響を与えるようになりました。討論会については、中止や延期も含め様々な可能性について、部会長や副部会長、討論会委員長、および関係する方々と検討を進めてまいりました。その結果、新型コロナウイルスに係る社会状況や学会の社会的責任等を考慮すると、東北大学での現地開催は困難であると判断せざるを得ないものの、コロイド・界面化学の継続的な発展や人材育成のために何らかの形で開催するべきであるとの結論に至りました。そこで、今回の討論会は、「オンライン開催」という形で開催させて頂くことで、役員会に諮りご了承を頂きました。コロイドおよび界面化学は、上述のように、身の周りから最先端の科学まで多岐にわたる分野に密接に関係しています。その発展の歩みを止めず、当該分野に係る研究者の皆様に交流の場を提供し、未来を担う学生や若手研究者の育成に寄与することが、この討論会が今果たすべき役割であろうと考えています。オンライン開催に同意し、その実施に向けて様々な建設的なご意見を下さった役員会メンバーの方々も同じお考えであると思います。
 皆様には、現地開催よりはご不便をおかけしてしまうこともあるかもしれませんが、オンライン開催という新しい形での学会を楽しんで活用して頂き、活発な議論の中から将来のシードとなる発想が生まれてくることを期待したいと思います。この討論会が、皆様の未来につながる橋渡しになればと考えております。
 
第71回コロイドおよび界面化学討論会 実行委員長
東北大学 多元物質科学研究所 教授
蟹江 澄志
 
討論会委員長
宇都宮大学工学部 教授
飯村 兼一