日本地質学会第130年学術大会

講演情報

セッション口頭発表

G-3.ジェネラル サブセッション応用地質・古生物

[2oral612-19] G-3.ジェネラル サブセッション応用地質・古生物

2023年9月18日(月) 15:00 〜 17:15 口頭第6会場 (共北37:吉田南総合館北棟)

座長:山崎 新太郎(京都大学防災研究所)、西山 賢一(徳島大学大学院社会産業理工学研究部)、加瀬 善洋(北海道立総合研究機構)

15:45 〜 16:00

[G3-O-4] 『電子野帳』 —ルートマップ・地質図作成用iPadアプリの開発—

*亀高 正男1、北川 博也1、豊田 守2、浪久 信2、柴原 幹2、佐藤 明1 (1. 大日本ダイヤコンサルタント株式会社、2. ジーエスアイ株式会社)

キーワード:iPadアプリ、地質調査、ルートマップ、地質図作成、DX

地表踏査を行い地図上にルートマップを記入し,それをもとに地質図を描くという作業は,地質学の最も基本的な作業の一つです.昼間,現地で地形図に手書きでなぐり書きしたメモを,夜に宿舎で整理し直す,またはパソコンに入力して整理し,翌日以降の踏査計画を修正する,といったことを皆さん体験していると思います.地質調査をメインとする業務では,この一連の流れで作業を行っている限り必然的に残業時間が増えて行く傾向にありますが,これは昨今の働き方改革による残業時間削減の方針に合致しにくい業務となってしまっています.しかし,もしルートマップや地質図を図化する部分を自動化できたなら,作業時間を大幅に削減できる可能性があります.そこで我々は,携帯端末に表示した地図上に現地で直接地質情報を入力し図化するアプリとして,『ダイヤ電子野帳(DDY)』の開発を進めています.
 アプリの開発に使用する携帯端末としては,画面が相対的に大きく,輝度が高く屋外での視認性が良いという理由から,iPadを選択しています.このようなアプリの開発が可能となった背景としては,標高データを持った地形図の普及,携帯型GPSの位置精度の向上,携帯端末のCPUの高速化などが挙げられます.
 既に登山用アプリを中心に,自分の位置情報や移動経路,写真撮影位置などを地図上に表示するための様々なアプリが公開されています.また,オープンソースの地形図や地質図を重ね合わせて表示するアプリも多数ありますが,そこに自分の地質調査結果を表示できるアプリはありませんでした.一方,走向傾斜を計測するアプリとしては,ジーエスアイと産業技術総合研究所が開発したGeoClinoが知られており,地図上に走向傾斜マークを表示する機能も備わっていましたが,走向線表示までは出来ませんでした.
 『ダイヤ電子野帳(DDY)』では,標高データを持った地図を背景地図に用いることにより,入力した走向傾斜データをもとにした地質分布の3次元表現を可能としています.現在開発中のバージョンでは,(1) 地理院地図やOpenStreetMapを表示し,シームレス地質図等と重ね合わせる,(2) GPSデータをもとに現在地や移動経路を地図上に表示する,(3) 地図上に露頭位置をプロットし,露頭情報(地質記載や走向傾斜)の入力を行う,(4) 写真やスケッチを露頭情報に紐づけて登録する,(5) 測定した走向傾斜から走向線を描画する,(6) 複数地点の走向傾斜データをもとに地質図を描画する,(7) 任意の側線で切った地質断面図を描画させる,などの機能が実装されています(図1).また,iPadのGPSの精度は現状ではそれほど高くないのですが,外付けの携帯型GPSとBluetoorhで連動させることにより,位置精度の向上を図ることが可能です.さらに,取得したデータを外部へ出力し,そのままPCでデータを加工することが可能となっています.この開発中のアプリが実用化されれば,地質調査の精度及び作業効率が格段に向上し,働き方改革やDX化への貢献が大いに期待されます.発表では,開発中のアプリの概要を説明し,実際の動作画面を紹介します.