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[IIIYS-03] ニワトリの攻撃行動を制御する分子基盤の解明
【目的】広い空間で多群管理を行う地鶏や採卵鶏の放し飼いシステムでは、攻撃行動による死亡率の増加が大きな問題となっている。本研究では、ゲノムワイドな解析手法の組み合わせにより、ニワトリの攻撃行動を構成している①攻撃性の高さと②攻撃パターンの分子基盤を明らかにすることを目的とした。【方法】①闘鶏用に維持されてきた攻撃性の高い大軍鶏系統および鶏肉用に育種改良されてきた攻撃性の低い大軍鶏系統を用い、計30サンプルの脳のRNA-seqにより遺伝子発現解析を行った。②攻撃行動のパターンが異なる大軍鶏の2集団(攻撃型・防御型)を用い、計45個体のDNA-seqによる集団ゲノム解析を実施すると共に、計4個体の間脳のRNA-seqによる遺伝子発現解析を行った。【結果・考察】①闘鶏用の大軍鶏系統において、5-HT合成経路を構成する酵素(Tph1, Ddc)の遺伝子発現の増加が確認されたことから、極端に高い攻撃性は、高5-HT条件下で強化される反応的攻撃性が亢進することにより表出することが示唆された。②防御型の攻撃パターンを示す集団では、線条体間接路特異的なPpp1r1bの遺伝子発現が増加し、当該神経経路の発達に重要なFoxp1遺伝子の領域に集団特異的な選択的一掃が確認された。したがって、防御型の攻撃パターンは、運動パターンを構成する神経回路のうち間接路が亢進されることによって現れると考えられた。