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[IIIYS-04] 全ゲノム解析によるヤギ雌性化乳房症を引き起こす原因多型の探索
【目的】女性化乳房症は男性の乳腺組織が肥大する性分化疾患である. この女性化乳房症と類似の症状を複数世代の個体が示すヤギ家系が発見されたが, その発症機構は不明である. ヤギ雌性化乳房病の原因遺伝子の同定はヒト女性化乳房症の理解に繋がることが期待される. 本研究では次世代シーケンサーを用いたエクソーム解析によりヤギ雌性化乳房病を引き起こす原因多型の探索を試みた. 【方法】全ゲノム解析には患畜2個体とこれらとは血縁関係のない正常畜4個体を供した. その後, 患畜と正常畜各4個体を用いて同定された多型の特異性を確認した. 【結果】全ゲノム解析の結果14,223個が患畜特異的な多型として同定されたが, 既知の性分化疾患の原因遺伝子や性ホルモンの生合成に関わる遺伝子では患畜特異的な多型は確認されず, ヤギ雌性化乳房症は既知の女性化乳房症とは異なる機構により発症することが示唆された. 興味深い所見として, X染色体上に位置する複数の遺伝子の多型を患畜はヘテロ接合の状態で保持していた. この結果は患畜がX染色体を2本以上持つことを意味し, この性染色体の異数性がヤギ雌性化乳房症の発症に関与していることが示唆された. 患畜は減数分裂特異的コヒーシン複合体を形成するREC8 にフレームシフト変異を持ち, この遺伝子の異常により本研究で解析したヤギ家系では複数世代に亘って染色体分配に異常が起きたと考えられた.