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[IVYS-03] 筋幹細胞活性化因子 HGF のニトロ化による不活化の生理学的意義:加齢性筋萎縮・再生不全の主要因のブレークスルー
【目的】当研究室では、筋幹細胞(衛星細胞)の活性化因子である肝細胞増殖因子(HGF)はニトロ化されると生理活性を失うことを見出した。本研究では、筋肥大・再生に関与する種々の細胞増殖因子もニトロ化されるか調べると共に、HGFのニトロ化が加齢性筋萎縮・再生不全へ関与するかを検証した。【方法】リコンビナントFGF2/IGF1/TGF-β3にペルオキシナイトライト(ONOO⁻)を生理的至適条件で添加しニトロ化誘導後、抗ニトロチロシン抗体を用いたWestern blottingに供試した。また HGF のチロシン残基のニトロ化を特異的に検出する蛍光標識モノクローナル抗体を2種作出した。これらの抗体を用いて、若齢・成熟・高齢期のS.D.系雄性ラットの後脚下腿部筋の凍結切片を免疫染色し、細胞外マトリックスに結合・保持されているHGF のニトロ化を可視化した。【結果】ONOO⁻ 処理したFGF2、IGF1、TGF-β3のいずれも、抗ニトロチロシン抗体陽性反応は全く検出されなかったことから、HGFのニトロ化は細胞増殖因子の中で特異な化学修飾であることが分かった。また、加齢に伴い細胞外マトリックスのHGF のニトロ化が進行・蓄積する他、速筋型筋線維タイプⅡaとⅡx型で HGF のニトロ化が顕著であることも観察された。以上より、筋線維タイプ特異的に起こるHGFのニトロ化が加齢性筋萎縮・再生不全の要因であると考えられた。