日本畜産学会第128回大会

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ポスター発表

2. 遺伝・育種

2. 遺伝・育種

[P2-30] カザフスタンとキルギスのラクダ交雑の集団遺伝学的研究

〇川本 芳1、西堀 正英2、吉開 純也2、国枝 哲夫3、木村 李花子4、山縣 高宏5、山本 義雄2、高橋 幸水6、Polat Kazymbet7、Meirat Bakhtin7、Asankadyr Zhunushov8、Sanjar Sultankulov9 (1.日獣生科大獣、2.広島大院統合生命科、3.岡山理大獣、4.東農大学情、5.名大院生命農、6.東農大農、7.カザフスタンアスタナ医大、8.キルギスバイテク研、9.キルギスJICA)

中央アジアではヒトコブラクダとフタコブラクダの分布が重なり,それらの交雑個体が広く使用されている。本研究では,以前に報告された12種類の診断用SNP(一塩基多型)をラクダの交雑判定に利用した。マルチプレックス SNaPshot® による同時遺伝子型判定法を設計し,カザフスタンとキルギスの交雑実態調査に応用した。カザフスタン西部のAktauの36試料とキルギスのSon-Kulの10試料を検査した結果,カザフスタンでは86%,キルギスでは60%の試料が交雑個体と判定でき,フタコブラクダに特異的な対立遺伝子の割合は,キルギス(平均0.967)の方がカザフスタン(平均0.288)より高かった。さらに結果をmtDNAタイプと形態(こぶの数)と比較したところ,カザフスタンでは,調査した集団でヒトコブラクダ側への選択的交配の兆候を認めた。キルギスでは,形態的にフタコブラクダに見えてもヒトコブラクダの固有遺伝子を持つ個体がいることを明らかにし,この国のラクダ交雑を初めて証明できた。新たに設計した分析法は,個体や集団の交雑状態を調査するのに効果的であり,その応用は今後の動物資源の管理と改良に向け基本情報を収集するのに役立つと期待される。ラクダの交雑状況を調査し,その社会的背景を理解することは,中央アジア諸国における今後の家畜管理と動物資源保護に重要な課題である。