日本畜産学会第128回大会

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ポスター発表

4. 形態・生理

4. 形態・生理

[P4-08] 熟成および熱処理した放牧牛肉における脂肪滴含有筋線維の組織学的解析

〇小笠原 英毅1、野原 香菜1、佐藤 江莉1、石井 絵梨1、高橋 辰行1 (1.北里大獣医)

【目的】我々はこれまで放牧飼養する日本短角種の大腿二頭筋において脂肪滴含有筋線維が増加することを明らかにした。しかしながら、この脂肪滴含有筋線維の熟成および調理過程における変動は明らかとなっていない。本研究では屠畜後から熟成、熱処理後までの脂肪滴含有筋線維の変動を食品組織学的に解析し、おいしさへの影響を明らかにすることを目的とした。

【方法】夏期に日本短角種去勢雄(約19ヶ月齢)を放牧区および舎飼区に分け(各4頭)、放牧終了時に屠畜した。枝肉から大腿二頭筋の近位部と中遠位部を採取し、両部位の一部は1週間、4℃で熟成(Wet Aging:WA)した。熟成後の牛肉を両面、各4分(Medium:M)加熱し、Warner-Bratzler剪断力価計で剪断力価を測定した。次に10μmの連続凍結切片を作成し、oil red Oおよびアザン染色を行い、脂肪滴含有筋線維および全筋線維数を算出した。

【結果】放牧区の両部位で加熱により剪断力価が低下した。舎飼区では両部位で放牧区より剪断力価が低かった。中遠位部の脂肪滴含有筋線維の割合は加熱により減少し(放牧区WA→M:22→15%、舎飼区WA→M:13→5%)、熱が直接影響する牛肉表面には脂肪滴含有筋線維が存在しなかった。以上より、放牧牛肉では熱処理により脂肪滴含有筋線維が残存しやすく、筋線維内の脂肪滴が牛肉のおいしさに影響を与える可能性が示唆された。