日本畜産学会第128回大会

講演情報

ポスター発表

4. 形態・生理

4. 形態・生理

[P4-09] 筋幹細胞の活性化・増殖因子HGFのニトロ化による不活化の生理学的意義: 暑熱ストレスによる筋成長阻害との関係

〇増原 夏海1、Mohamed Z. Elhussiny1、Vishwajit S. Chowdhury1、今冨 菜々1、Alaa Elgaabari1,2、城戸 潤力1、澤野 祥子1,3、水野谷 航1,4、松吉 祐児1、鈴木 貴弘1、中村 真子1、古瀬 充宏1、辰巳 隆一1 (1.九大院農、2.カフル・アッシャイフ大、3.麻布大生命環境、4.麻布大獣)

【目的】筋幹細胞(衛星細胞)の活性化・増殖因子である肝細胞増殖因子(HGF)はニトロ化されると生理活性を失うことをこれまでに明らかにした。この新奇知見は、HGFのニトロ化が衛星細胞の細胞動態を制御し得ることを示唆している。近年、暑熱ストレスが誘導する鶏の筋成長阻害による産肉量低下が問題となっている。本研究では、この主要因がHGFのニトロ化・不活化であると仮説を立て、暑熱ストレス負荷により鶏骨格筋のHGFがニトロ化されるかを検証した。【方法】6日齢の雄性肉用雛鶏(Gallus gallus domesticus)に室温35℃で1日5時間の暑熱ストレスを負荷し3日間飼育した。対照区の飼育温度は28℃とした。両実験区から腓腹筋を主とする下腿筋を採取し、その凍結切片をニトロ化HGFを特異的に認識する蛍光標識モノクローナル抗体で免疫染色した(n = 3個体/区)。【結果および考察】使用したニトロ化HGF抗体が鶏のニトロ化HGFを認識することを、鶏HGFの部分ペプチド(ラット・マウスHGFでニトロ化が確認されているチロシンを含む10残基)に対するELISAで確認した。この特異抗体で筋切片を蛍光免疫染色すると、暑熱負荷区において明瞭な陽性反応が観察された。この結果は、鶏に暑熱ストレスを負荷すると筋のHGFのニトロ化が誘導されることを示しており、暑熱による筋成長阻害の要因である可能性が示唆された。