[P4-19] 筋幹細胞の活性化抑制機構の発見:活性化因子HGFのニトロ化による生理活性の消失
【目的】筋肥大・再生に不可欠な筋幹細胞(衛星細胞)の「物理刺激依存的な活性化機構」を解明する過程で、活性化を抑制する強力な分子機構が存在することが洞察された。これは、高強度の物理刺激(高頻度伸展:通常の約1.7倍の刺激頻度)を負荷すると、活性化因子HGF(肝細胞増殖因子)は細胞外マトリックスから正常に遊離するが衛星細胞は活性化しないという結果に基づいている。本研究ではこの不可解な現象を説明すべく、衛星細胞の活性化カスケードを構成するNOラジカルの代謝産物であるペルオキシナイトライト(ONOO-)による「遊離HGFのチロシン残基のニトロ化・不活化(作業仮説)」を検証した。【方法】リコンビナントHGFにONOO-を添加しニトロ化誘導を行い、抗ニトロチロシン抗体によるウエスタンブロッティングによりHGFのニトロ化の有無を調べた。ニトロ化誘導したHGFを衛星細胞の初代培養系に添加しBrdU法により活性化能を測定した他、HGF受容体に対する結合能を調べた。【結果】ONOO-処理によりHGFがニトロ化され不活化(生理活性の消失)することが明らかになった。HGFのニトロ化反応は顕著なモル比依存性を示し、至適pH 7.4では数秒以内に完了することも分かった。また、高頻度伸展刺激で遊離したHGFのニトロ化も確認されたことから、HGFのニトロ化・不活化が衛星細胞の活性化抑制機構の主軸であると考えられた。