日本畜産学会第128回大会

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ポスター発表

4. 形態・生理

4. 形態・生理

[P4-28] 子牛の強化哺乳と育成期の配合飼料給与が肥育後の肝臓の代謝調節にもたらす変化

〇室谷 進1、大江 美香1、尾嶋 孝一1、斎藤 昭2、後藤 貴文3 (1.農研機構 畜産研究部門、2.全酪連、3.鹿大院農)

【目的】成長初期の栄養状態が体質形成に大きく影響する分子機構にはエピジェネティクスが関与することが知られ、ウシでも同様の機構が増体等に影響する可能性があると考えられている。本研究では、黒毛和種去勢子牛を強化哺乳し、かつ育成期に配合飼料給与した場合に、肥育後の肝臓での代謝とその調節の変化について調べた。【方法】対照区に対し、生後3ヶ月間に増量した代用乳で哺乳し10ヶ月齢まで配合飼料を給与した黒毛和種牛群を強化区とし、10ヶ月以降両区(各n=3)とも粗飼料により肥育した。と畜時に採材した肝臓から代謝化合物、全RNAを抽出し、それぞれCE-およびLC-TOFMSによるメタボローム解析と、遺伝子発現解析を行った。【結果】強化区では、枝肉重量、皮下脂肪、ロース芯面積ともに有意に増加した(p<0.05)。メタボローム解析の結果、強化区ではアシルカルニチン、βヒドロキシ酪酸が減少、Asn、Gln、Ser、カルニチン等が増加する傾向を示した。Metabolite Set Enrichment Analysisの結果から、ミトコンドリア内のβ酸化活性の低下が示唆された。また、強化区ではβ酸化や脂質代謝に関わるCPT1A、PPARA、RXRAの遺伝子発現が有意に低下していた(p<0.05)。枝肉重量が高い強化区では、初期の栄養強化が肥育後の肝臓ミトコンドリアのβ酸化活性に影響を及ぼしたと考えられた。