日本畜産学会第128回大会

講演情報

ポスター発表

4. 形態・生理

4. 形態・生理

[P4-41] 去勢による熱産生関連遺伝子Ucp1の発現異常と生体リズム変化の関連性

大西 裕貴1、鈴木 茉央2、丸澤 茉実2、〇大塚 剛司2 (1.岐阜大院自然科学、2.岐阜大応生)

家畜管理上、去勢は生産性向上に繋がる重要な処置の一つである。近年、伴侶動物やヒトへの去勢に関しても、疾患治療や攻撃性低下、心身の健康を維持する上で重要になってきている。一方で、去勢は肥満や代謝異常を誘発することから、ある程度のリスクを伴う。こうした去勢に伴う代謝性疾患の発症メカニズムはいくつか考えられているが、完全には解明されていない。これまでの研究において、去勢は白色脂肪細胞(scWAT)における熱産生関連遺伝子Ucp1の発現を変化させることが知られている。本研究においても、去勢を施したマウスはscWATのUcp1の発現変化とそれに伴う深部体温および体重の変化を示した。このUcp1の発現変化は去勢後にテストステロンを投与しても効果がなかったため、テストステロン分泌異常とは別の機構が考えられる。去勢は生体リズムにも影響することが知られているため、去勢後に体内時計中枢である視交叉上核(SCN)およびscWATにおける時計遺伝子の24時間発現リズムを測定したところ、どちらの部位も、発現リズムが変化していた。そして興味深いことに、scWATのUcp1発現にはリズムがみられ、去勢後は発現リズムが変化することがわかった。このことから、去勢はSCNおよびscWATの生体リズムを乱し、この乱れがUcp1の発現異常と深く関わり、肥満や代謝異常に繋がる可能性が示唆された。