[P6-26] サシバエ幼虫・蛹の分布場所と羽化に適した条件
牛舎周辺のサシバエ発生源を調査し,結果をもとにサシバエ羽化に適する条件について,人工的な産卵床(牛ふん)の乾燥およびふ化幼虫を飼育する資材(牛ふん、飼料残渣)の量から検証した。東京都農林水産振興財団青梅庁舎の牛舎周辺に散在する飼料残渣や牛ふん中に生息するハエ幼虫を採取し,飼料残渣や牛ふんを資材として飼育したところ,ウォーターカップ周辺の飼料残渣やバーンクリーナー周辺の牛ふん,スノコ間隙の牛ふんなどから採取された幼虫が高い割合でサシバエ成虫へ羽化した。一方,係留場排水溝の牛ふんにハエ幼虫は見られず,放飼場の牛ふんからはサシバエ成虫の羽化割合は低かった。次に,牛ふんを産卵床として24時間供し,産卵開始からそれぞれ48,72,96時間まで乾燥させたところ,時間の経過とともに雌ハエ1頭あたりの羽化数は低下した。また,雌ハエ1頭あたりの飼育資材(牛ふん、飼料残渣)の量が60g以下の場合はほとんど羽化せず,資材が多くなるにつれて羽化数も増加した。サシバエ幼虫は一定の水分を含む飼料残渣や牛ふんに存在し、それらを餌とすることで成長・羽化に至るが,分解が進み幼虫が利用できる養分が少なかったと思われる係留場排水溝の牛ふんや,表面が乾燥しやすい放飼場の牛ふんは,卵のふ化やふ化直後の幼虫の成長に適さず,新鮮な牛ふんや飼料残渣が常に供給され,水分養分が保持される場所で多くの幼虫が成長・羽化すると考えられた。