日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

C 農畜水産物とその加工品 (Agricultural product, Livestock product, Seafood, and their processed products)

[2Hp] 野菜、果実

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 H会場 (3F N303)

座長:大坂 隆志(広島県立総合技術研究所)、菅原 哲也(山形県工業技術センター)、重村 泰毅(東京家政大学)

16:45 〜 17:00

[2Hp-08] りんごの機能性成分を増加させたドライアップルの調製に関する研究

*王 匯子1、鮎田 陵佑2、岩井 邦久1,2 (1. 弘前大学大学院地域共創科学研究科、2. 弘前大学農学生命科学部)

キーワード:ドライアップル、プロシアニジン、凍結乾燥、ラジカル消去活性

【目的】りんごには健康に有益な機能性成分が含まれており,特にプロシアニジン類には膵リパーゼ阻害活性や抗酸化活性があることが分かっている.そのことから,機能性表示食品の生鮮りんごも市販されるようになった.しかし,摂取目安量のプロシアニジンを摂るためには約1.5個のりんごを食べる必要がある.生鮮りんごをドライアップル (DA) にすることで,少ない量で手軽にプロシアニジンを摂取することができるが,ただ乾燥させるだけではプロシアニジン量は生と同じであり,果皮を除くと逆に減少してしまう.そこで,りんご果皮を使用してプロシアニジンを増加させたDAの調製法を検討した.
【方法】りんご紅玉を使用し,果皮からプロシアニジン類を抽出した.果肉の前処理として生と凍結乾燥を施し,果皮抽出液を添加してDAを調製した.DAの総ポリフェノール濃度をフォーリンデニス法で測定し,プロシアニジン類をHPLCで定量することで機能性成分量を評価した.また,DAのDPPHラジカル消去活性と膵リパーゼ阻害活性を測定し,機能面の評価も加えた.
【結果】総ポリフェノール濃度は,果皮抽出液を添加したDAが無添加DAより有意に増加した.前処理で凍結乾燥したDAの総ポリフェノール濃度は,生果肉から調製したDAよりも増加した.DAのプロシアニジン類の濃度も果皮抽出液添加により増加したが,生果肉に添加した場合は添加の7%しか増加しないのに対し,凍結乾燥果肉に添加すると83%増加し,凍結乾燥前処理の優位性が示された.DAのDPPHラジカル消去活性および膵リパーゼ阻害活性は凍結乾燥果肉+果皮抽出液のDAが最も強く,これらの活性はDAのプロシアニジン濃度と良好な正の相関を示した.以上の結果より,凍結乾燥した果肉に果皮抽出液を添加することにより機能性成分を増加させたDAを調製し得ることが示唆された.