2:50 PM - 3:20 PM
[SC2-02] Improved functionalities of plant-based meat analogs by enzymes
Keywords:Plant-based meat analogs, Enzyme, Binding ability, Color characteristics, Beany off-flavor
【講演者の紹介】酒井杏匠 (さかいきよた):天野エンザイム株式会社 開発二部 蛋白・調味料チーム 研究員
略歴:2018 年天野エンザイム株式会社入社.2022 年農学博士(京都大学) 取得.現在に至る.
(1)はじめに
世界人口は2050年までに97億人に達する見込みである.そのため,タンパク質源の需給バランスが崩れるタンパク質危機が生じ,畜肉が持続可能な食糧ではなくなる.解決手段として,植物原料を用いて畜肉を再現する「植物性代替肉」が脚光を浴びている.多くの技術的革新にも関わらず,市販製品は有史以来人類が築いた畜肉の嗜好性に及ばない.そのため,本分野の目標は,畜肉を再現した高機能性代替肉の開発である.本演題では代替肉の課題を解決すべく開発した酵素アプリケーションを紹介する.
(2)結着性アプリケーション
メチルセルロース(MC)は代替肉の結着剤として使用されるが,化学的に製造されるためケミカルフリーの新規結着システムが求められていた.本研究では酵素による新たな架橋システム構築を目指した.その結果,ラッカーゼがタンパク質-ペクチン架橋を形成し,代替肉の保形性・結着性を高めることを見出した[1]. 更に,本架橋システムは,既存のMC結着システムに比べてジューシーさに富んでいた[2].この新規な架橋システムはMC代替技術としてケミカルフリートレンドを満たすことが期待される.
(3)色特性アプリケーション
焼成工程により畜肉の鮮やかな赤色は香ばしい褐色へ変化する.この色調変化を代替肉で再現することも課題である.代替肉には赤色ビート色素が採用されるが,植物タンパク質が黄褐色を呈するため染まりが悪く,焼成による色調変化も不十分だった.本研究では「植物タンパク質の脱色システム」及び「ビート色素の褐色化システム」構築を目指した.その結果,過酸化水素及びカタラーゼによって植物タンパク質を脱色でき[3],ビート色素及びラッカーゼによって畜肉の褐色化を代替肉で再現できることを見出した[4,5].これらの技術により,畜肉の色特性を代替肉で再現することが期待される.
(4)大豆臭低減アプリケーション
もう1つの課題は原料由来の素材臭である.特に大豆臭は閾値が低く,他フレーバー剤を添加してもマスキング効果が低い.そのため,大豆臭が代替肉製品の欧米消費者への受容性を困難にしている.大豆臭の原因物質は,ヘキサナールなどの疎水性揮発物質である.本研究では大豆臭低減システムの開発を目指した.その結果,サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼによって産生したサイクロデキストリンが疎水性揮発物質を抱合することで,代替肉からの揮発量を低減できることを見出した[6].本技術はクリーンラベルを満たした大豆臭低減効果を代替肉に付与することが期待される.
(5)まとめ
顧客が抱えるその他課題(呈味性やテクスチャーなど)に対しても,酵素アプリケーションを種々開発してきた.今後も酵素アプリケーションの無限の可能性を信じ,酵素価値を社会に提供していく.
[1]Sakai, et al. (2021) Sci Rep.11,16631. [2]Sakai, et al. (2024) Food Sci Technol Res.30,4.
[3]Sakai, et al. (2022) Sci Rep.12,1168. [4]Sakai, et al. (2024) Food Sci Technol Res.30,2.
[5]Sakai, et al. (2022) Sci Rep.12,22432. [6]Sakai, et al. (2022) PLoS One.17,e0269278.
略歴:2018 年天野エンザイム株式会社入社.2022 年農学博士(京都大学) 取得.現在に至る.
(1)はじめに
世界人口は2050年までに97億人に達する見込みである.そのため,タンパク質源の需給バランスが崩れるタンパク質危機が生じ,畜肉が持続可能な食糧ではなくなる.解決手段として,植物原料を用いて畜肉を再現する「植物性代替肉」が脚光を浴びている.多くの技術的革新にも関わらず,市販製品は有史以来人類が築いた畜肉の嗜好性に及ばない.そのため,本分野の目標は,畜肉を再現した高機能性代替肉の開発である.本演題では代替肉の課題を解決すべく開発した酵素アプリケーションを紹介する.
(2)結着性アプリケーション
メチルセルロース(MC)は代替肉の結着剤として使用されるが,化学的に製造されるためケミカルフリーの新規結着システムが求められていた.本研究では酵素による新たな架橋システム構築を目指した.その結果,ラッカーゼがタンパク質-ペクチン架橋を形成し,代替肉の保形性・結着性を高めることを見出した[1]. 更に,本架橋システムは,既存のMC結着システムに比べてジューシーさに富んでいた[2].この新規な架橋システムはMC代替技術としてケミカルフリートレンドを満たすことが期待される.
(3)色特性アプリケーション
焼成工程により畜肉の鮮やかな赤色は香ばしい褐色へ変化する.この色調変化を代替肉で再現することも課題である.代替肉には赤色ビート色素が採用されるが,植物タンパク質が黄褐色を呈するため染まりが悪く,焼成による色調変化も不十分だった.本研究では「植物タンパク質の脱色システム」及び「ビート色素の褐色化システム」構築を目指した.その結果,過酸化水素及びカタラーゼによって植物タンパク質を脱色でき[3],ビート色素及びラッカーゼによって畜肉の褐色化を代替肉で再現できることを見出した[4,5].これらの技術により,畜肉の色特性を代替肉で再現することが期待される.
(4)大豆臭低減アプリケーション
もう1つの課題は原料由来の素材臭である.特に大豆臭は閾値が低く,他フレーバー剤を添加してもマスキング効果が低い.そのため,大豆臭が代替肉製品の欧米消費者への受容性を困難にしている.大豆臭の原因物質は,ヘキサナールなどの疎水性揮発物質である.本研究では大豆臭低減システムの開発を目指した.その結果,サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼによって産生したサイクロデキストリンが疎水性揮発物質を抱合することで,代替肉からの揮発量を低減できることを見出した[6].本技術はクリーンラベルを満たした大豆臭低減効果を代替肉に付与することが期待される.
(5)まとめ
顧客が抱えるその他課題(呈味性やテクスチャーなど)に対しても,酵素アプリケーションを種々開発してきた.今後も酵素アプリケーションの無限の可能性を信じ,酵素価値を社会に提供していく.
[1]Sakai, et al. (2021) Sci Rep.11,16631. [2]Sakai, et al. (2024) Food Sci Technol Res.30,4.
[3]Sakai, et al. (2022) Sci Rep.12,1168. [4]Sakai, et al. (2024) Food Sci Technol Res.30,2.
[5]Sakai, et al. (2022) Sci Rep.12,22432. [6]Sakai, et al. (2022) PLoS One.17,e0269278.