国際開発学会第34回全国大会

講演情報

一般口頭発表

国際開発援助(日本語)

2023年11月12日(日) 12:45 〜 14:45 紀-407 (紀尾井坂ビル407)

座長:伊東 早苗(名古屋大学) コメンテーター:大門(佐藤) 毅(早稲田大学)、宗像 朗(国際協力機構)

14:15 〜 14:45

[2M08] 国際協力におけるCo-Financeの「全体像」をどう捉えるか
~中国とDACドナー間の取り組みを事例に~

*石丸 大輝1、*土居 健市2、*汪 牧耘3、*林 薫4 (1. 独立行政法人国際協力機構、2. 早稲田大学、3. 東京大学、4. 元 文教大学)

キーワード:Co-Finance、国際協力、援助協調、中国、OECD(経済協力開発機構)DAC(開発援助委員会)

2000年代頃から中国は国際開発における主要な資金供給者として台頭し、開発途上国への対外援助を増大させている。一方、透明性の欠如や「債務の罠」などの問題が顕在化してきた。それに対して中国政府は2020年には融資体系の健全化を掲げ、OECD-DAC規範への歩み寄りも一部指摘されている。また、フランス等では中国との第三国市場協力の動きもみられる。SDGs達成に向けた資金需要の高まりも相まって、中国と他ドナー、とりわけDACとの援助協調の在り方が一層問われている。
 援助協調の定義は多様であり、それに係る研究は1990年代以降増えている。そのなか本研究は、援助協調の一形態であるCo-Financeに焦点を当てる。これまで、中国とDAC諸国のCo-Financeに関する断片的な議論があったものの、その全体像を把握する研究はほとんどない。本研究は、こうした先行研究の空白を埋めることを試みる。具体的には、国際開発関連のデータを最も網羅的に収集しているAid Dataの検索結果と、日本の開発実務者や有識者から収集した資料を中心に、分析を行った。
 現段階の調査結果は以下となる。Aid Dataに収録された中国とDACドナーとのCo-Financeは51件あり、一般的な中国の対外援助と同様、商業的動機が多く、エネルギー・運輸交通セクターが多数を占めた。日本とのCo-Financeは13件あり、韓国に並ぶ首位となる。そこでも同様の傾向が見受けられる。また、Aid Dataに収録されたCo-Financeは、同一案件に融資する「共同融資」が取り上げられやすく、ドナー間で援助協調を意図せず偶発的に形成された案件も勘定されていた。他方、プロジェクト内で地域や部門を区分した「パラレル融資」や、個別プロジェクトを越えた「セクタープログラム」や「政策」レベルでの協調融資は見落とされる傾向を確認した。これらも含めたCo-Financeの全体像について把握するには、受け手となる途上国各政府の国家計画等に対し、中国やDACドナーがどのように関与・協調しているかについて探る必要がある。

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