国際開発学会第34回全国大会

講演情報

一般口頭発表

海洋文化・先住民族(日本語)

2023年11月11日(土) 09:30 〜 11:00 紀-404 (紀尾井坂ビル404)

座長:関根 久雄(筑波大学) コメンテーター:佐藤 敦郎(九州大学)、東方 孝之(アジア経済研究所)

09:30 〜 10:00

[1L01] 開発に直面する先住民族の協議・FPICに関する国際比較研究プロジェクトの構想

*寺内 大左1、小坂田 裕子2、深山 直子3 (1. 筑波大学、2. 中央大学、3. 東京都立大学)

キーワード:協議、FPIC、先住民族、先住民族の権利に関する国際連合宣言、国際比較研究

1.発表の背景・目的
 本発表は、研究プロジェクト「開発に直面する先住民族の協議・FPICに関する国際比較研究」を立ち上げるに至った背景と構想を、主にインドネシアの焼畑先住民地域における企業の開発の事例を用いて説明し、フロアからコメントをいただき、研究プロジェクトを前進させることを目的としている。
 研究プロジェクトは「先住民族の権利に関する国連宣言」(国連宣言)で規定される協議義務や「自由意思による事前の十分な情報に基づく同意」(FPIC)を得る義務が、世界各地の開発現場でどのように実施されているのかを明らかにし、そのパフォーマンスを分ける背後にどのような社会・文化・政治的な要因が存在するのかを分析するものである。そして、現場の実態に基づき地域性に配慮した実効性の高い協議・FPIC取得のガイドラインを複数提言することを目標としている。

2.調査方法
 焼畑先住民の村で参与観察と聞き取り調査を2006年から現在に至るまでに合計約1年6か月間実施してきた。

3.結果
 インドネシアでは、企業は事業権を取得するために開発前に住民に対して説明会を開催し、住民から同意を得る必要がある。しかし、企業はデメリットになる情報を提供しないなどFPICに反する方法で同意を取得していた。このような国連宣言に規定される協議とFPICを遵守させることで解決できる問題がある一方で、協議・FPIC取得のプロセスがそもそも先住民の社会と不適合であったり、FPICを取得することが問題を引き起こしたりするという実態も見えてきた。例えば、国連宣言の協議と同意が民主主義義的な合意形成と契約を前提にしており、それらが先住民族の合意形成のあり方や開発の性格と不適合であるなどの問題が確認された。
 協議・FPICのパフォーマンスと地域性は関連しており、世界各地の先住民族の協議・FPICの事例研究を蓄積し、地域性に配慮したより実効性の高い協議・FPICのガイドラインを構築する必要があると考えられる。

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