[1R06] 気候変動の影響が武力紛争を招く社会の脆弱性条件
キーワード:気候変動、紛争、安全保障、脆弱性
研究内容は、系統的文献レビューを通じて、気候変動と紛争を結ぶ社会の脆弱性としてどのような要因が既存研究で指摘されているのかということである。レビューの結果明らかになった点は、大きく分けて三つである。第一に、既存文献の中では、社会関係資本(慣習)、ジェンダー問題、土地や地理関連の問題など、従来の脆弱性分析フレームワークには含まれていない条件がいくつも指摘されていた。第二に、既存研究では(気候変動適応としての)技術へのアクセスや非民主制に関して、研究が少なかった。第三に、既存文献の指摘を踏まえれば、従来の脆弱性分析フレームワークの分類基準は必ずしも正確ではなく、見直しが必要であった。本研究は、こうした点を考慮に入れて、新たな脆弱性分析フレームワークを提案した。また、本研究は、気候安全保障研究の今後の研究の方向性について、五つの提案を行った。第一に、従来の研究では定量的な分析よりも定性的な分析が少ないため、今後は気候変動の影響によって紛争に至る各国・地域の脆弱性の特殊事情に関して事例研究を積み重ねる必要がある。第二に、紛争を起こしやすい脆弱性条件があったとしても紛争に至らなかった事例や協力関係を結んだ事例があるので、その事例に関してより研究を積み重ねる必要がある。第三に、既存フレームワークの中でも、調査の少ない条件(技術へのアクセスや非民主主義など)や既存フレームワークでは説明できなかった脆弱性条件に関して、研究を積み重ねる必要がある。第四に、各脆弱性条件は単独で紛争を導くわけではなく、相互に作用して引き起こすと考えらえるので、その相互のつながりについて研究を積み重ねる必要がある。最後に、気候変動の影響を経験しているが紛争を経験してない国や地域の脆弱性条件に関して事例研究を積み重ねる必要がある。
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