国際開発学会第34回全国大会

講演情報

一般口頭発表

環境、サスティナビリティ(日本語)

2023年11月12日(日) 12:45 〜 14:15 紀-409 (紀尾井坂ビル409)

座長:松岡 俊二(早稲田大学) コメンテーター:佐々木 大輔(東北大学)、古沢 広祐(國學院大学)

13:45 〜 14:15

[2N05] 生産国の実情から考える持続可能なパーム油
-インドネシアとマレーシアの事例に着目して-

*吉田 秀美1、*楊 殿閣2 (1. 一般社団法人 持続可能なサプライチェーン研究所、2. 一般社団法人 ソリダリダード・ジャパン)

キーワード:パーム油、RSPO、小規模農家、マレーシア、インドネシア

1. 研究の背景とリサーチクエスチョン:
 自然環境の保全や人権デューデリジェンスの導入など、企業活動の責任が求められているなか、パーム油の調達企業はサプライヤーにあたる搾油工場やアブラヤシ農園の状況把握と管理改善が急務となってきた。RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil)による認証を調達の基準にする企業も増えている。しかし、先進国の企業がRSPO認証油だけを調達すればパーム油生産地の課題は解決されるのだろうか。認証が小規模農家を排除していると批判されているが実態はどうなのか。

2. 資料・情報および分析方法:
 RSPOが公開している加盟団体データベースから、インドネシアとマレーシアの搾油工場(傘下に自社大規模農園と契約農家を抱える)および小規模農家のリストを用いて、両国のアブラヤシ栽培地に占める認証取得栽培地の比率を算出した。この結果と併せて、2023年7月に西カリマンタンとサラワクで行った現地調査でのヒアリング結果をもとに、RSPOの役割と限界を分析した。

3. 得られた知見:
(1) アブラヤシ栽培地のRSPO認証取得率は、インドネシア(大規模:27%、小規模0.7%)、マレーシア(大規模:24.4%、小規模3.9%)共に大規模農園が高かった。しかも大規模農園が認証を取得した農地面積のうち、上位5社が5割以上を占めた。
(2) RSPO認証を取得した西カリマンタンの小規模農家は、FFB(Fresh Fruit Bunch)を通常の価格で搾油工場に販売していた。取引のある搾油工場が認証を取得していないためである。ただし、認証によりクレジットの収入が得られるというメリットはあった。
(3) RSPOは厳しい基準を課すため、生産国の企業傘下の農園管理に対して環境負荷軽減や労働者の人権配慮等の後押しができる。消費国の企業にとっては、RSPO認証油を調達の条件にすることで、サプライチェーン上のリスクを低減できる。一方で、企業と契約関係のない独立小規模農家による生産や流通の実態には合っていない。
(4) アブラヤシ産業全体のサステナビリティを考えるならば、小規模農家を包摂する補完的枠組みが必要である。

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