国際開発学会第34回全国大会

講演情報

一般口頭発表

平和構築、レジリエンス(日本語)

2023年11月12日(日) 15:00 〜 17:00 紀-409 (紀尾井坂ビル409)

座長:湖中 真哉(静岡県立大学) コメンテーター:松本 悟(法政大学)、桑名 恵(近畿大学)

15:30 〜 16:00

[2N07] 中国の都市におけるコミュニティレジリエンスの構築に関する質的研究—ソーシャル・キャピタルの視点から

*王 藝璇1 (1. 大阪大学大学院)

キーワード:ソーシャル・キャピタル、コミュニティ・レジリエンス、"7.20"河南省洪水災害

ソーシャル・キャピタルが「結束型」、「橋渡し型」「リンク型」という3つタイプに分けられ、コミュニティのレジリエンス構築において重要な役割を果たすと多くの研究に指摘されている。しかし、この3つのタイプのソーシャル・キャピタルが異なるコミュニティでどのように作用するか、どのような違いがあるのか、異なるコミュニティでいかに具体的なレジリエンス向上の戦略を開発する研究はまだ不足している。そこで、本研究では、質的なアプローチを用いて、中国の鄭州市を研究ケースとして選んで、異なるコミュニティにおけるソーシャル・キャピタルの構造的な違いを調べた。鄭州市は中国で洪水災害が頻発する地域であり、2021年7月に大規模な洪水に見舞わた。本研究は鄭州市で最も深刻な被害を受けた地域におけるの3つの異なるコミュニティ(コミュニティA:新型不動産管理コミュニティ、コミュニティB:移民コミュニティ、コミュニティC:伝統的な近隣コミュニティ)の住民を対象にし、参与観察と半構造化インタビューを行った。

結果によると、三つのコミュニティの結束型ソーシャル・キャピタルは比較的に強く、災害発生後に最も大きな役割を果たした。家族、友人、親しい近隣が、災害支援の主要な資源となっている。さらに、コミュニティAは3つのコミュニティの中で橋渡し型のソーシャル・キャピタルが唯一機能していたとも言える。Aの位置(都心部)と被災地域でのAの知名度の高さから多くの援助組織は支援対象としてAを優先的に選ぶ傾向にあった。また、コミュニティCのリンク型ソーシャル・キャピタルがAやBよりも積極的な役割を果たしているこ。Cは伝統的なコミュニティとして、人口構成はAとBよりシンプルで、住民と行政はほぼ顔見知りの関係にあるので、信頼感の醸成が促進されていると考えられる。これにより、Cは洪水後に政府からより多くの支援を受けている。
 結論として、三つの被災コミュニティのソーシャル・キャピタルの構造的な特徴は以下のようである。
1、新型不動産管理コミュニティA:整備されたコミュニティ管理システムを有しているが、リンク型ソーシャル・キャピタルが欠如している。結束型とは橋渡し型が災害後機能し続けるについて疑問がある。長期的な視点から見る、レジリエントコミュニティの構築に課題がある。
2、移民コミュニティB:移民により内部のネットワークが分断していて、管理も混乱している。これにより橋渡し型、リンク型の形成が困難である。
3、伝統的近隣コミュニティC:人口構成が一番シンプルので、結束型と末端組織とのリンク型が強力。しかし、外部の資源とのアクセスが悪く、災害回復の速度が遅い。

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