国際開発学会第34回全国大会

講演情報

一般口頭発表

社会開発、コミュニティ(日本語)

2023年11月12日(日) 09:30 〜 11:30 紀-412 (紀尾井坂ビル412)

座長:小早川 裕子(東洋大学) コメンテーター:藤掛 洋子(横浜国立大学)、松丸 亮(東洋大学)

09:30 〜 10:00

[2O01] 通域的な学びの実践 - Africa-Asia Business Forumにおける学び合いを媒介とした地域間のつながり

*工藤 尚悟1 (1. 国際教養大学)

キーワード:通域的な学び、地域、コミュニティ、Africa-Asia Business Forum

1. 研究の背景およびリサーチクエスチョン
 国際協力や開発学は、地域を対象とする場面が多い。地域に関する研究体系には、事例、比較、地域間研究などがあるが、いずれもその知見の共有範囲は、研究者や実務者に限定される。地域に暮らす人々が直接的に知見を共有し合う場の設定を、研究が担うことはできないか。学術と社会が知を共創する超学際アプローチが提唱されているが、国際協力や開発学における超学際とはどのようなものか。こうした問題意識から、本研究は、異なる風土にある地域どうしはどのように出会い、双方のあいだに学び合いの関係性を構築することができるのか、という問いに取り組む。

2. 資料・情報および分析方法
 本研究は、国際教養大学とプレトリア大学(南アフリカ)が共同実施したAfrica-Asia Business Forumを事例とする。このフォーラムは、「通域的な学び」という、異なる風土に根ざした主体との出会いから、慣れ親しんだ思考パターンや現状の再解釈を促す学びの方法論に基づいて設計された。参加者はアグリビジネスの起業家たちで、それぞれに事業を行う具体の地域を持っている。南アフリカと日本で共同フィールドワークを実施し、プログラムを通じて得られた学びについて、参加者のジャーナリング、グループリフレクション、事後インタビューを通じてデータ収集を行い、定性的コーディング分析を行った。

3. 得られた知見
 フォーラムでは、自らの考えの軸となる地域を持ちながら、異なる慣習や実践を行う他地域と「学び合い」を媒介として出会うことで、多様な新しい知見や気付きが得られることが示された。社会経済状況が大きく異なる社会からの参加者たちであったが、学びを通じた自己変容を強調することで、双方向に学び合う姿勢を持った並列な関係性が築かれた。加えて、研究者は、参加者が気付きを共有する場面で、適時に学びほぐしや再解釈を促すことで、通域的な学びを浮かび上がらせた。こうして、研究が地域間の学び合いを担う可能性が示された。

パスワード認証
報告論文や要旨の閲覧にはパスワードが必要です。パスワードを入力して認証してください。

パスワード