社会開発、コミュニティ（日本語）

[2O02] 開発学における表情解析の応用可能性：マダガスカル農村の女性における事例

*山田 浩之¹ (1. 慶應義塾大学)

キーワード：表情解析、マダガスカル、女性

従来の既存研究では、人々の幸福感や感情を質的・量的に調べるために、主に聞き取り調査が用いられてきた。しかしながら、従来の手法は調査対象の主観に極めて強く影響され、手法的な限界も多々指摘されてきた。本研究ではその代替的手法の一つとしての、表情解析の開発研究への応用を試みる。表情解析は研究者側が一定の基準を設定し、それを基に調査対象者の幸福感や感情を客観的に専用のソフトウェアを用いて数値化しようという試みである。開発研究での応用例はほぼ皆無であり、極めて新規的な試みといえる。 　
　具体的には、2023年5月にマダガスカルのアチモンジャン郡の農村で実施された家計調査の際に500名以上の15歳以上の女性の笑顔の表情を撮影し、解析を行った。僻地で暮らす女性は日々の暮らしで様々な困難や苦労に直面しておりそれらすべてを聞き出すことは困難が伴い、教育水準も必ずしも高くないことから質問票を用いた調査の理解度も完全ではない可能性がある。このような文脈で表情解析を用いることにより、重要な情報を得ることが出来ると考えられる。 　
　数値化された表情解析のデータと家計調査から得られた生活環境の様々な変数の間の関係性について回帰分析を用いて調べた結果、いくつかの生活上の要因や個人特性が、表情解析の結果と相関していることが分かった。