国際開発学会第34回全国大会

講演情報

一般口頭発表

社会開発、コミュニティ(日本語)

2023年11月12日(日) 09:30 〜 11:30 紀-412 (紀尾井坂ビル412)

座長:小早川 裕子(東洋大学) コメンテーター:藤掛 洋子(横浜国立大学)、松丸 亮(東洋大学)

10:30 〜 11:00

[2O03] ブータン東部におけるアブラナ科野菜の普及の実態とその要因-タシガン県バルツァム郡を事例に-

*生駒 忠大1,2 (1. 京都大学、2. 日本学術振興会)

キーワード:ブータン、アブラナ科、農業普及、換金作物、農業開発

1. 研究の背景およびリサーチクエスチョン
ヒマラヤの小国ブータン王国(以下、ブータン)では、ジャガイモが農民の重要な換金作物として認識されてきた。しかし、1960年代にはじまった農産物の多様化・付加価値化、農業機械化、改良品種の導入等を含む農業近代化政策や、2003年以降の中央政府主導による野菜普及強化プログラムを背景に、近年はキャベツやブロッコリー、カリフラワー等のアブラナ科野菜(以下、アブラナ科野菜)が、温帯地域を中心に栽培されるようになっており、都市部や郊外のみならず農村でも広く消費されている。 本研究では、ブータン最東部に位置するタシガン県バルツァム郡を対象に、アブラナ科野菜普及の実態とその要因、ならびに農業実践における技術的影響を、アブラナ科野菜の栽培特性、経済性、そして農民の生活との関係性から紐解く。
2. 資料・情報および分析方法  
分析に用いる一次データは、バルツァム郡で2022年5月から2023年9月にかけて実施したフィールドワーク中に収集した。調査方法は、篤農家や一般農民への聞き取り調査、集落内全世帯を対象とした質問票調査、食事観察、農作業への参与観察である。加えて、インターネットやブータン王立大学構内図書館で入手した農業政策に関する二次データも分析対象とした。
3. 得られた知見および結論  
集落内の50%以上の世帯が、アブラナ科野菜を各々の圃場で自給・商業目的で栽培しており、集落内で重要な栽培作物に位置していることが明らかとなった。普及の背景には、アブラナ科野菜の栽培簡便性や栽培適期が長期であるという栽培条件上の要因が第一にある。一方で、夏季に発生する虫害を緩和するための農薬導入の誘因ともなっていた。また、こうした技術的な特性に完結せず、アブラナ科野菜は食文化や牧畜とも結合しており、農民の生活や生業に深く取り込まれていることが明らかとなった。

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