日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Bp] その他の成分、感性評価、官能評価

2024年8月31日(土) 14:15 〜 16:45 B(S3)会場 (3F N322)

座長:清水 宗茂(東海大学)、豊泉 友康(静岡県農林技術研究所)、斉藤 史恵(山梨大学)

14:30 〜 14:45

[3Bp-02] 嗅覚受容体を活用したレモンの劣化臭マスキング技術

*串田 衛1、廣瀬 貴子1、河戸 弥生1、北田 亮1、伊地知 千織1、吉田 慎吾1 (1. 味の素株式会社)

キーワード:嗅覚受容体、官能評価、レモン、4-メチルアセトフェノン

【目的】レモンの香気成分の一つであるシトラールは, レモンの華やかな香りを付与する一方で, 熱による劣化を受けやすいことが知られており, 劣化臭原因物質のマスキング技術が求められている. 他方で我々は, 独自の嗅覚受容体評価技術と官能評価を組み合わせることにより, 従来の官能評価手法に比べ迅速かつ網羅的に, 劣化臭のマスキング物質が探索可能な技術の開発を進めている. そこで本研究では, 嗅覚受容体アッセイを活用し, レモン劣化臭の主要原因物質である4-メチルアセトフェノン臭のマスキング物質を探索することを目的とした.
【方法と結果】ヒト嗅覚受容体のうち352種をHEK293T細胞に発現させ, ルシフェラーゼレポータージーンアッセイにより, 4-メチルアセトフェノンに対する各受容体の応答強度を測定したところ, 嗅覚受容体OR5P3に強い応答が見られ、同受容体が4-メチルアセトフェノンの新規受容体であることを見出した. 次に, 香気ライブラリー1,168成分を用いて, 同受容体の応答強度を抑制する物質(アンタゴニスト)の探索を実施したところ, 39成分のアンタゴニストが見出された. 見出されたアンタゴニストについて, 4-メチルアセトフェノン水溶液に添加し, 官能評価を実施した結果, 13成分で4-メチルアセトフェノン臭 に対するマスキング効果が確認された(WO2023-149441). さらにこれら成分のうち実用可能性の高い成分について, 製品利用系での効果を検証するため, 40℃10日熱劣化させたシトラール含有炭酸飲料に添加した際の効果を検討したところ, 製品のプロファイルを損なわず, 最も自然なマスキング効果を発揮する成分を見出した. 以上より, 本嗅覚受容体評価技術と官能評価を組み合わせることが, マスキング物質の網羅的かつ迅速な探索において有効な手段であることが示唆された.