国際開発学会第34回全国大会

講演情報

一般口頭発表

オンライン(日本語)

2023年11月11日(土) 09:30 〜 12:00 紀-409 (紀尾井坂ビル409)

座長:高柳 彰夫(フェリス女学院大学) コメンテーター:戸田 隆夫(明治大学)、高橋 基樹(京都大学)

11:00 〜 11:30

[1N04] 島嶼は日本の縮図たるか?——離島及び日本における水・エネルギーの対外依存状況に着目した一考察

*關谷 武司1、*吉田 夏帆2、*芦田 明美3 (1. 関西学院大学、2. 兵庫教育大学、3. 名古屋大学)

キーワード:地域開発、島嶼開発、水、エネルギー、対外依存

現代の日本では、地方の過疎化と都市部の過密化、コミュニティの弱体化、第一次・第二次産業の衰退、低下し続ける食料自給率、低迷の一途を辿る経済などさまざまな問題が顕在化している。これらの問題の原因究明や解決策立案は急務であるが、そのために日本全体を対象として調査研究を行うことは複雑かつ困難と言わざるを得ない。他方で、島嶼関連の先行文献に目を向けると、しばしば「島嶼(離島)は日本の縮図である」という表現を目にする。仮にそれが真であるならば、その島嶼(離島)を事例として調査研究を行い、そこに横たわる諸課題の原因や構造を究明することで、最終的には現代日本が抱える諸問題の原因や構造を明らかにし、その解決策立案につなげることができるのではないだろうか。しかしながら、島嶼(離島)は日本の縮図であるという見解については、それを真正面から証明した先行研究は管見の限り見当たらない。このような背景から、本研究は、日本再生に向けた調査研究の第一歩として「島嶼(離島)は日本の縮図たるか?」というリサーチクエスチョンを設定し、まずはそれを明らかにすることを目的とする。
 離島にとっては真水(上水)、日本にとっては石油(エネルギー資源)の安定確保が、長年それぞれの存続及び発展の鍵を握ってきた。そこで本研究では、「離島における真水確保の自立度合いと近隣本土地域への依存度合いの関係や変遷が、日本における石油確保の自立度合いと海外への依存度合いの関係や変遷と類似である」という仮説を設定する。そして、「離島統計年報」及び「政府統計」の統計データや各種文献の分析、ならびに島民への半構造化インタビュー調査等を通してその仮説を検証することで、本研究目的の達成を試みる。なお、本研究の対象離島は、兵庫県姫路市の家島群島とする。
 分析の結果、主に以下のことが明らかとなった。1)戦後の家島群島及び日本においては真水や石油の対外依存度は小さい反面、その確保可能な量は十分ではなかった。それが、現在においては、真水や石油の移入・輸入の拡大によって安定確保が可能となり、それぞれの対外依存度も100%に至っている。2)例えば、1973年のオイルショックの影響によって真水や石油の確保可能な量や価格が変動したように、家島群島及び日本における真水や石油の安定確保の条件は対外状況に依存している。

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