国際開発学会第34回全国大会

講演情報

一般口頭発表

援助機関と現場(日本語)

2023年11月11日(土) 09:30 〜 11:00 紀-412 (紀尾井坂ビル412)

座長:林 薫((元)文教大学) コメンテーター:小林 誉明(横浜国立大学)、志賀 裕朗(横浜国立大学)

10:00 〜 10:30

[1O02] バングラデシュ郡自治体円借款事業によるガバナンス改善: ガバナンス借款の可能性

*宗像 朗1、*杉山 卓2 (1. 独立行政法人国際協力機構、2. 株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング)

キーワード:地方自治体、ガバナンス、円借款、バングラデシュ、行政評価

バングラデシュの郡自治体借款事業(UGDP)をガバナンス改善事例として分析し、ガバナンス借款の可能性を検討する。 UGDPは、1)毎年全郡(約500郡)を対象に実施した行政評価(PA)、2)PA結果に基づいた開発資金(PBA)の郡への供与、3)研修とファシリテーター(UDF)による郡ガバナンス改善支援、の三つを柱にする約147億円の円借款事業である。 この三つをUGDPのセットアップとし、その着実な実施が郡ガバナンス向上に貢献することをPA結果から検証する(リサーチクエスチョン)。500郡のPA結果の平均点は、第1回PAの34点から第5回PAでは71点に向上した。5回のPA結果報告書で詳細を示す。PAは、法令で定められた郡自治体業務の実施状況を、外部機関による各業務に係る行政文書確認で行った。5回のPAは同じ指標を用い、その変化は郡自治体のガバナンスを客観的に表す。郡自治体のガバナンス改善要因として、1)PAと研修による「郡自治体が実施すべき業務」の理解促進、2)PA結果で配布される開発資金(PBA)による改善動機付けと郡間競争、3)郡に配属されたファシリテーターによる促進効果、などが考えられる。本論では各要因の効果分析は行わず、前述のセットアップが一体で郡のガバナンス改善に貢献した道筋を検証する。 円借款事業であるUGDPでは、PA結果に基づいて配布された開発資金(PBA)を使って郡による地方インフラ・機材整備(3351事業)や研修(9311コース)が実施されたので、その概要と効果も示す。PBAがUGDP全事業費の約80%を占めるのに対し、直接的な郡ガバナンス関連投資である5回のPAは全事業費の0.5%、全郡研修が0.3%、ファシリテーターの雇用費用は約5%で、これら三つのガバナンス改善関連経費は、全事業費の7%以下である。 UGDPの経験は、円借款による全自治体(或いは学校・病院などの分野組織)のガバナンス改善を広域で実現する「ガバナンス借款」の可能性を示している。 UGDPを事例にして、「ガバナンス借款」の実現可能性を協議したい。

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