国際開発学会第34回全国大会

講演情報

一般口頭発表

平和構築、レジリエンス(日本語)

2023年11月12日(日) 15:00 〜 17:00 紀-409 (紀尾井坂ビル409)

座長:湖中 真哉(静岡県立大学) コメンテーター:松本 悟(法政大学)、桑名 恵(近畿大学)

16:00 〜 16:30

[2N08] エルサルバドル共和国帰国研修員によるパイロット事業の形成過程と実施に関する要因分析:ポストコンフリクトにおける地域住民の主体的生活改善活動に着目して

*藤城 一雄1 (1. 独立行政法人国際協力機構)

キーワード:JICA本邦研修帰国研修員、主体的生活改善活動、自立発展性、ポストコンフリクト、エルサルバドル共和国

1. 研究の背景およびリサーチクエスチョン エルサルバドル政府は、1992年の内戦終結以降、多くの開発援助を受けてきたが、パターナリズムによる農民の依存心や日和見主義の増大もあり、農村地域貧困層への有効な開発アプローチを見出せていない。JICAもプロジェクトや本邦研修を実施してきたが、帰国研修員による自立発展的な成果に至っていない。 本研究の目的は、本邦研修の帰国研修員等が、どのようにパイロット事業を組織的に形成し、その実施に至ったのかを事例分析から明らかにする。 2. 資料・情報および分析方法 JICAが中米地域向け生活改善アプローチ研修により、エルサルバドル共和国から2005~2022年の間に49名の研修員等を受入れた。14名が参加した地方開発のための社会投資基金(FISDL)は、2015~2017年まで、21市、87生活改善サークル、1,568名を対象に生活改善アプローチパイロット事業を実施した。 本研究は、中米地域向け生活改善アプロ―チ研修の概要、エルサルバドルからの研修員の参加結果及び主な帰国後の実践結果を取り纏め、8名の当時の関係者(FISDL職員や市長等)にインタビューを実施し、いつ、どのように計画、実施され、1,214名の人生計画策定の成果までに至った過程を詳述し、実施に至った要因を、自立発展性に注目し、政策、実務、市役所、コミュニティの4つのレベルについて、組織面、技術面、財政面から分析した。 3. 得られた知見 FISDLパイロット事業が地域住民の主体形成の端緒となり得た要因は、従来事業の自立発展性への問題意識、政策レベルの強いイニシアチブ、市長・市役所のインセンティブ、帰国研修員による生活改善アプローチの学び、ポストコンフリクトに起因するコミュニティの社会的信頼の再構築及び依存心脱却に配慮した心理的アプローチ、徹底的なプロモーター育成、既存予算の有効活用があげられた。(798字)

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