日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[2Bp] フレーバー物質,色素

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 B(S3)会場 (3F N322)

座長:伊藤 彰敏(あいち産業科学技術総合センター)、笹木 哲也(石川県工業試験場)、熊沢 賢二(小川香料)

17:45 〜 18:00

[2Bp-11] 果汁感を増強する柑橘由来の香気成分の解明

*草野 友実1、村田 有明1、平良 和也1、中山 裕治1、中崎 敦夫2、富山 賢一1、倉部 朱希1、矢口 善博1 (1. 高砂香料工業(株)、2. 岩手大・理工)

キーワード:柑橘、果汁感、香料、香気成分

【目的】柑橘類はそのまま生食されるほか,果汁や精油は飲料,グミ,キャンディーなどの加工食品,香粧品等に多く利用されているが,その生産量は世界的な天候不順や病害虫の影響を受ける.そこで当社は調合に使用する天然精油を安定供給可能な香料原料に代替することで,サステナブルな香料開発を目指している.柑橘の香気成分については,これまでに多くの研究が行われてきたが,今もなお明らかになっていない重要香気成分が存在する.本研究では柑橘の未知重要香気成分の探索,単離構造決定および香料素材としての有用性について調査することとした.
【方法】各種柑橘精油をGCOに供し,重要香気成分の探索を行った.未知化合物の内生量が多いと推定されたブラッドオレンジ精油1kgをSAFEで蒸留後,多段階のHPLCにて目的物を単離・精製し,NMR等により構造解析を行った.さらに化学合成により得た両エナンチオマーを用いたキラル分析を実施した.また,目的物の香料素材としての有用性を検証するため柑橘様香料への添加効果を確認した.
【結果】柑橘精油のGCOにより,せとか,紅まどんな,ブラッドオレンジ,ユズ,スダチ,カボス,グレープフルーツ等の精油に共通する,エステル様のフルーティーな甘い香りを有する未知化合物の存在が示唆された.単離した目的物の精密質量およびNMRスペクトルの解析により,その構造を三環式含酸素モノテルペンである(2S*,3aS*,5S*,6aS*,7S*)-6a,7-dimethylhexahydro-2H-2,5-methanocyclopenta[b]furanと決定した.ブラッドオレンジ精油中の本化合物のキラル分析を行ったところラセミ体であった.天然物から初めて見いだされた本化合物は,柑橘様香料に添加することで自然な甘い果汁感や果実感を増強することが明らかとなった.