[3Ap] フレーバー物質，色素

[3Ap-02] ガムやタブレット菓子で発生するほこり臭の解明と嗅覚受容体応答を利用したマスキング香料の開発

*木嶋 恭子¹、村井 正人¹、佐下橋 篤志¹、瓦谷 明宏¹、山田 太久¹、寺田 育生¹、星野 邦秀¹、矢口 善博¹ (1. 高砂香料工業（株）研究開発本部)

キーワード：オフフレーバー、マスキング、嗅覚受容体、ほこり臭、アスパルテーム

【目的】フルーツ系の香料と組み合わせてアスパルテームを含有するガムやタブレットが製造された後，オフフレーバー（ほこり臭）がしばしば発生し，嗜好性が下がる問題があった．本研究では，その原因物質を特定し，当該成分の嗅覚受容体応答を指標にほこり臭のマスキング香料を開発することを目的とした．
【方法】ほこり臭が発生する香料の組み合わせを検討した．ほこり臭発生の原因要素であったhexanal，trans-2-hexenalおよびアスパルテームを配合したモデルタブレットをSPME-GCMSおよびGCO分析に供した．GCOにて検知した特に強いほこり臭ポイントの成分を明らかにするため，原因要素の三成分を等量ずつ混合し，加熱したサンプルから抽出および各種クロマトグラフィーによる単離精製を経て，構造推定および確認合成を行った．ほこり臭の原因物質をヒト嗅覚受容体発現細胞約400種に添加し，応答する嗅覚受容体を特定した．当該受容体の応答を抑制するアンタゴニストを数百類の香料物質の中から選択し，これらのアンタゴニスト物質によるほこり臭の低減効果（マスキング効果）をヒト官能試験により検証した．
【結果】アスパルテームと香料由来のhexanalおよびtrans-2-hexenalが共存する際に特に強いほこり臭が発生することを見出した．ほこり臭の原因物質は新規物質の3-ethyl-2-pentylpyridineであることを明らかにした．さらに，3-ethyl-2-pentylpyridineに対して機能未知の嗅覚受容体OR2AG2が濃度依存的に強く応答することが分かった．ヒト官能試験において，OR2AG2の応答を抑制するアンタゴニスト物質は3-ethyl-2-pentylpyridineの有する不快なほこり臭に対してマスキング効果を示すことが確認できた．この知見を元に，ほこり臭マスキング香料が開発できた．