日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

C 農畜水産物とその加工品 (Agricultural product, Livestock product, Seafood, and their processed products)

[3Ia] 畜産物、乳製品

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 I会場 (3F N302)

座長:大沼 正人(北海道大学)、谷本 守正(東京聖栄大学)、荒谷 陽介(北海道立食品加工研究センター)

10:00 〜 10:15

[3Ia-05] 小角X線散乱を用いたモッツァレラチーズにおけるナノ構造の季節変化観察

*福田 遥暉1、大沼 正人2 (1. 北海道大・院・工、2. 北海道大・工学研究院)

キーワード:モッツァレラチーズ、CCP、脂肪、季節、SAXS

【目的】
牛乳の成分やチーズの品質は季節で変動することが知られており, 乳成分や味やチーズの収量などの季節変化についての研究は散見される. 一方で, チーズのナノ構造の季節変化に関する客観的なデータは不足している. そこで我々は, ナノ構造の季節変化の情報を定量化することを目的に, 季節ごとのモッツァレラチーズを用いて小角X線散乱法により実験を行った.
【方法】
小角X線散乱(SAXS)と超小角X線散乱(USAXS)には, Rigaku社製のMicroMaxTM-07とSmartLabをそれぞれ使用した. 試料はジャパチーズ旭川の長尾英治氏にご協力いただき, 同社のモッツアレラチーズを2ヶ月ごとに1年間の測定を行った. これらのモッツァレラチーズを厚さ約5 mmの円柱状にカットした後, 金属セルに封入し, 室温(20–25°C)で測定を行った. 次いで, 得られたデータの解析とフィッティングを行い, ナノ構造の情報を得た. ただし, 一部の試料については測定上の問題があり, 今回の議論には使用していない.
【結果】
脂肪結晶由来のピークは, 9/13のサンプルで散乱強度が大きく低下していることが確認された. これは, 乳脂肪分の割合が夏に低下することに対応しており, このピークの散乱強度と乳脂肪分割合との関連が示唆された. CCPの体積分率も9/13のサンプルで低下が確認された. これは, リンとカルシウムの比(P/Ca)が夏に低下することに対応しており, モッツァレラチーズ中のCCP体積分率が, 原料乳のP/Caに影響を受けることが示唆された. SAXSのプロファイルもCCP体積分率も, 2023年1/25と2024年1/17で最も一致し, 再現性が確認された. これらから, チーズのナノ構造の季節変化における小角X線散乱法の有用性が認められた.