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[2Np-03] 形質評価に基づいたファージ耐性化大腸菌の制御
キーワード:バクテリオファージ、大腸菌、食中毒細菌、食品衛生
【目的】溶菌ファージは宿主細菌に感染して溶菌する. 一方, 一度ファージに感染した細菌細胞はファージ感染に対して耐性を獲得し, このファージ耐性化はファージの利用において問題となっている. 本研究では, 溶菌ファージに対する大腸菌の耐性化機構を明らかにし, これに基づいたファージ耐性化大腸菌制御法の確立を目的とする.【方法】非病原性大腸菌BW25113株に対して溶菌ファージS127BCL3をMOI = 0.01となるように感染させ, LB培地中, 37℃で一夜インキュベート後の培養液からファージ耐性化大腸菌を6株単離した. はじめにファージの感染に必要なLPSの構造の推定を行った後, BATH法により菌体表層の疎水性ならびに菌体の凝集性を調べ, クリスタルバイオレット法によりバイオフィルム産生性を評価した. さらに,界面活性作用を有する安全性の高い食品添加物であるカプリン酸モノグリセリド(MG10)とファージの併用によるファージ耐性化大腸菌の制御を試みた.【結果】大腸菌LPS主鎖にグルコース残基を付加する酵素の遺伝子欠損株およびヘプトース残基のキナーゼ遺伝子欠損株に対するファージS127BCL3の感染効率は親株に対する感染効率よりも著しく低かったことから, 本ファージはLPSのアウターコアあるいはリン酸基の修飾を感染に必要とすることが示唆された. 単離した全てのファージ耐性化株において, 37℃培養後の強い細胞凝集性ならびにバイオフィルム形成に関与するCurli繊毛の産生量の増大が確認された. 一方, これらの形質は30℃培養後には確認されず, ファージ耐性化に起因する大腸菌の温度依存的な形質発現が示唆された. さらに, ファージ耐性化株は親株よりも菌体表層の疎水性が高く, MG10に対する感受性も高かった. 800 µM MG10とファージの併用により, 大腸菌BW25113株ではファージ耐性化菌の再増殖が抑制された.