日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Ap] フレーバー物質,色素

2024年8月31日(土) 14:15 〜 16:45 A(S2)会場 (3F N321)

座長:中田 勇二(味の素)、島村 裕子(静岡県立大学)、西津 貴久(岐阜大学)

16:15 〜 16:30

[3Ap-08] クッキー咀嚼中の食塊物性と香気の放散特性の経時的変化について

*佐藤 瑠星1、園田 哲也3、伊藤 塁人3、今泉 鉄平2、西津 貴久2 (1. 岐阜大・院、2. 岐阜大、3. 森永製菓(株))

キーワード:クッキー、香気成分、咀嚼

【目的】クッキーのおいしさは,口腔内で崩れる感覚と同時に知覚される風味によって総合的に決定される.本研究では当研究室で開発した人工咀嚼装置を用いて,官能評価の異なる市販クッキーについて,その咀嚼中の食塊物性と香気の放散特性の経時的変化を測定し,品種間の傾向の違いを定量的に表すことを目的とした.【方法】試事前評価によりチョコレート風味や食感の異なる市販の3種類のチョコチップクッキーを選定した.人工咀嚼装置から咀嚼5,10,19回咀嚼した食塊の硬さ,付着性,凝集性をTPAによって決定した.人工咀嚼装置の口腔部より,ヘッドスペースガスをDART-MSに2秒ごとに導入して咀嚼中の香気の経時変化を測定した.以上で測定したデータを用いて主成分分析を行い,3製品の咀嚼中の主成分スコアの経時的変化を求めた.【結果】3試料すべてで人工食塊の平均粒子径と硬さは咀嚼の進行とともに減少し,食塊の付着性は増加した.うち2試料は食塊の凝集性とピラジン類の焙焼香気成分の強度は咀嚼進行に伴い増加し,残る1試料には凝集性の経時変化がみられず,香気成分強度は減少傾向がみられた.主成分分析の結果,咀嚼中のスコアプロット(第1主成分と第2主成分)上で,3試料は異なる経路をとった.第1主成分の負の向きに食塊の硬さと粒子径との相関が強く,また第2主成分は香気成分強度と付着性,凝集性を表し,軌跡が第1象限に近づくと,香気成分強度との相関が強く,第4象限に近づくと付着性,凝集性との相関が強い.咀嚼開始直後は第2象限からスタートし,凝集性と香気成分強度が増加を示した2試料は,第1象限に近づきながら第4象限に移動した.香気成分が減少する試料については,第1象限に近づくことなく,第3象限に向かっていた.以上の方法により,咀嚼中の食塊物性と香気放散特性の品種間の傾向の違いを定量的に評価できることが確認できた.