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[3Ap-09] 物質的根拠のある匂い名の選定
キーワード:匂い名、物質的根拠、基準匂い
【目的】これまでに提案した味といえる4種の根拠を匂いに適用することを考えた.本報告では物質的根拠を取り上げる.なお,味では基本味以外の味を探索することが目的であったが,匂いでは化学物質は別々の匂いを呈するとされており,匂い用語の中から匂い名といえるものを選定することが目的になった.【方法】物質的根拠のある匂い名とは「単独の化学物質が呈する認識であることを根拠にした匂い名」である.匂い名の候補用語は,行政資料,学術論文,関連専門書籍,フレーバーホイールからの収集と中納言を用いた検索による収集によった.匂い名とみなす基準は,味の場合に物質的根拠のある味で適用した基準(異名用語タイプ)に加えて,味では物体的根拠のある味に活用した基準(同名用語タイプ)も適用した.【結果】物質的根拠のある匂い名が,52種選定できた.その内訳は,物質名が上に付く匂い名が28種,物体名が上に付く匂い名が17種,一般的匂い名が7種であった.匂い名の下に付く語は「臭」が多く,全体の40種を占めた.物質名が上に付く匂い名の内訳は,アンモニア臭などの「無機物質名型」(10種)と酢酸臭などの「有機物質名型」(13種)およびエステル臭などの「有機物類名型」(5種)であった.物体名が上に付く匂い名は,ゲラニオールによるバラの香りなどの「名詞+の型」(7種)とジェオスミンによるカビ臭などの「名詞連結型」(10種)に区分できた.これらは,バラようの香りとかカビ臭様などと記述されることも多いが,そのような表現の匂い名は選定されなかった.一般的匂い名には,悪臭や腐敗臭などのように,呈する化学物質の多い匂い名が含まれていた. 物質的根拠があり且つ(化学)物質名が上に付く名称の匂いは,認識が最も確かとみなせるであろう.一般に認識が不確かとされる匂いにおける,この特徴は重要である.この条件を厳格に満たす18種の匂いを基準匂いと呼ぶ.