日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Cp] 食品分析

2024年8月31日(土) 14:15 〜 17:00 C会場 (3F N323 )

座長:仲川 清隆(東北大学)、松田 寛子(日本獣医生命科学大学)、間野 博信(あいち産業科学技術総合センター)

16:00 〜 16:15

[3Cp-08] 有機溶媒ゼロで行う低水分フライ食品からの遠心分離による過酸化物価分析用油脂の抽出

*塩野 忠彦1、重田 有仁1、山﨑 梨沙1、金﨑 真悠1 (1. 広島総研 食品工技セ)

キーワード:油脂、抽出、遠心分離、過酸化物価

【目的】フライ食品(ポテトチップス,いかフライ等),種実類の品質指標である過酸化物価を分析するための油脂試料は,ジエチルエーテルにより製品から抽出することが一般的である.一方,労働安全衛生関係法令の改正により,化学物質管理の強化が義務化されたことに伴い,食品製造企業では健康管理やコスト面等から有機溶媒使用量削減のニーズが高まっている.本報告では,有機溶媒を用いることなく,遠心分離により油脂抽出を行う方法について報告する.あわせて,ジエチルエーテル抽出油脂と遠心抽出油脂の過酸化物価の分析値比較を行った結果を報告する.
【方法】粉砕した試料(いかフライ等)を不織布製袋に充填し,50ml容の遠沈管に入れ,油脂抽出率を高めるために恒温器で加温した.次いで,遠心分離(2,200g,30分間,室温)により試料から油脂を抽出した.遠心抽出後,3%(w/w)NaCl溶液を混合・遠心分離することにより,洗浄・夾雑物除去し,得られた油脂を過酸化物価分析試料とした.また,油層の回収性を高めるため,水層のゲル化についても検討した.対照としてジエチルエーテル抽出法(基準油脂分析試験法 参2.5.1-2013,日本油化学会)に準じて抽出(以下,溶媒抽出法)を行い,過酸化物価分析に用いた.過酸化物価は,クロロホルム法(基準油脂分析試験法 参1.4-2013,日本油化学会)に準じて行った.
【結果】いかフライ等低水分試料については,遠心分離により有機溶媒を使用しなくても分析用試料を抽出できた.遠心抽出及び洗浄処理を行った試料と溶媒抽出法で抽出した試料の過酸化物価は概ね同等(PV5程度で10%以下)だった.ガスクロマトグラフによる脂肪酸分析では,両抽出法で得られた試料の脂肪酸組成比はほぼ同等であった.以上の結果から,本抽出法は溶媒抽出法に比べて,安全でランニングコストを大きく低下できる可能性が示唆された.