日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[2Ap] 栄養成分(タンパク質,炭水化物,脂質,ビタミン,ミネラル)

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 A(S2)会場 (3F N321)

座長:菅原 達也(京都大学)、友寄 博子(熊本県立大学)、宗 伸明(佐賀大学)

17:00 〜 17:15

[2Ap-08] グルタチオンとコメアレルゲンタンパク質の構造

*得字 圭彦1、天間館 貴子1 (1. 帯広畜産大学)

キーワード:コメ、メタボローム、タンパク質、グルタチオン

【目的】米品種「ゆきひかり」にはアレルギーの抑制効果があるとの報告がある。そのメカニズムの可能性については、腸内発酵や腸内細菌叢、腸管の透過性などがこれまでに報告されているが、ゆきひかりのアレルギー抑制効果の機構の全容を説明するには至っておらず、原因物質も明らかになっていない。本研究では、ゆきひかりに特徴的な成分を明らかにするため、メタボローム解析およびタンパク質パターンの比較を行ったので報告する。【方法】アレルギー抑制効果が報告されている「ゆきひかり」とその効果が見られない品種の精白米から水溶性物質と脂溶性物質を抽出した。水溶性物質はCE-MS、脂溶性物質はLC-MSによりメタボローム解析を行った。精白米のタンパク質はNative PAGEで比較し、両品種間で異なるタンパク質バンドを切出し、LC-MS/MSによりタンパク質を同定した。同定したタンパク質の配列をもとに抗ペプチド抗体を作成し、ウエスタン解析を行った。【結果】メタボローム解析の結果、ゆきひかりのグルタチオン含有量はアレルギー抑制効果のない品種の1/20程度しかないことが判明した。また、Native PAGEでタンパク質パターンを比較したところ、ゆきひかりには約350kDaのバンドが見られ、グルタチオンを加えると減少した。このバンドをLC-MS/MS解析したところ、既知のアレルゲンタンパク質を含むことがわかった。この中にはシステイン残基を多く含むα-アミラーゼ/トリプシンインヒビターファミリーのタンパク質が複数見られ、グルタチオンがシステイン間のジスルフィド結合を調節している可能性が考えられた。構成タンパク質の抗体を用いたウエスタン解析を行った結果、複数の構成タンパク質に対する抗体で350kDaのバンドを検出したことから、これらが複合体を形成していると考えられた。