日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Aa] フレーバー物質,色素

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 A(S2)会場 (3F N321)

座長:平 修(福島大学)、寺田 祐子(静岡県立大学)、佐川 岳人(エスビー食品)

09:30 〜 09:45

[3Aa-03] 亜臨界水抽出時のアントシアニンの安定化機構および発色の温度依存性の解明

*新名 世実1、園田 素啓2、高井 雄一郎1 (1. (地独)大阪府立環境農林水産総合研究所、2. 大阪公立大・院・農)

キーワード:アントシアニン、色素、会合、亜臨界水

【目的】
通常,アントシアニンは,中性から弱酸性において不安定であるとされているため,酸性条件下において有機溶媒を用いて抽出されるが,発表者らはアントシアニンの一種であるナスニンを対象に,亜臨界水処理という高温高圧下で安定して抽出できること,さらに,冷凍すると発色が回復することを見出した.本研究では,亜臨界水処理時のナスニンの安定化機構と,その発色の温度依存性の解明を目的とし,これらの現象に寄与すると考えられるナスニンの会合体形成について検証した.
【方法】
吸光度測定によりナスニン水溶液の吸光度スペクトルのモル濃度依存性を調べた.さらに会合体の形成を確認するため,円偏光二色性(CD)測定,および核磁気共鳴(NMR)測定を行った.また,会合形成と発色の温度依存性との関係について検証するため,分光光度計の測定温度を25℃,10℃,5℃,0℃と変化させ,ナスニン亜臨界水抽出液の吸光度を測定した.
【結果】
ナスニン水溶液の濃度が5×10-3 Mのときの吸光度がランベルトベールの法則に従わなかったことから,一定の濃度以上では,分子の構造が変化するものと推測された.さらに,CD測定において,濃度が10-3 M以上のとき,コットン効果を示すことが確認されたことから,ナスニン水溶液が高濃度のときに会合体を形成する可能性が示された.同時に,NMR測定により線幅の広がりが確認されたことも会合形成を支持していると考えられた.また,発色の温度依存性について,亜臨界水抽出液の吸光度を0℃から25℃の範囲で測定した結果,0℃のときの吸収極大波長(538 nm)での吸光度は,25℃の吸光度と比較して約1.2倍高くなることが確認された.