日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3Ka] 加工、製造技術

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 K会場 (2F N206)

座長:松本 泰典(高知工科大学)、上野 聡(広島大学)、本同 宏成(静岡県立大学)

09:00 〜 09:15

[3Ka-01] 脂質ウィスカー結晶から構成されたオレオゲルの構造評価と物性の解明

*中野 郁也1、小泉 晴比古1,2、大石 憲孝3、木村 勇気4、山﨑 智也4、津田 信治3、上野 聡1,2 (1. 広大生生、2. 広大院統合生命、3. ミヨシ油脂、4. 北大低温研)

キーワード:オレオゲル、トリアシルグリセロール、ウィスカー

【目的】近年,マーガリンやショートニングなどの加工油脂食品に含まれている飽和脂肪酸の摂取による健康リスクについて考えられるようになった.そのため,飽和脂肪酸含量を抑えることを目的とした食用油脂として,オレオゲルに目が向けられるようになった.オレオゲルとは,液状油に10 wt%未満のゲル化剤を加えることにより形成される半固体状の分子集合体であり,産業利用に向けた研究が盛んに行われている.大石らは,トリアシルグリセロール(TAG)分子の一種であるPSPを多く含む極度硬化油をゲル化剤としてキャノーラ油に加え,オレオゲルを作製したところ,ゲル化剤が0.5 wt%の低濃度でも繊維状結晶を晶出させると,貯蔵弾性率が劇的に増加することを明らかにした1).しかし,なぜ繊維状の結晶が晶出すると貯蔵弾性率が増加するのかは,まだ明らかになっていない.そこで本研究では,まず繊維状結晶の構造評価を行い,その形態とレオロジー特性との相関を調査することを目的とした.
【方法】キャノーラ油を用いたオレオゲルの繊維状結晶の構造評価には,透過型電子顕微鏡(TEM)が用いられた.また,キャノーラ油をはじめとした,いくつかの液状油に60 wt%純度PSPをゲル化剤として加え,調整温度と調整時間を異なる条件で作製したオレオゲルに対して偏光顕微鏡(PLM)観察とレオロジー特性試験を行った.
【結果】TEM観察の結果から繊維状結晶はウィスカー結晶と呼ばれる単結晶であることが明らかとなった.このことから, オレオゲル内にウィスカー結晶が形成されると,極めて低い添加濃度でも,高い貯蔵弾性率を持つオレオゲルの作製が可能であるとわかった.発表当日は,作製条件を変えたオレオゲルから観察されたウィスカー結晶の形態とレオロジー特性の相関についても報告する.
1)N.Oishi et al., Food Structure 37 100333 (2023).