日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3La] 発酵、酵素利用

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 L会場 (2F N205)

座長:小林 元太(佐賀大学)、成澤 直規(日本大学)、藤田 智之(信州大学)

10:30 〜 10:45

[3La-07] モリンガ種子の麹発酵産物(モリンガ麹)に含まれる機能性成分について

*関口 愛里彩1、上野 義栄2、森 朋子3、青木 秀之3、尾山 廣1 (1. 摂南大・院・理工、2. 京都女子大・家政、3. 池田食研(株))

キーワード:モリンガ種子、麹菌、発酵、抗酸化、アンジオテンシン変換酵素

【目的】モリンガ(Moringa oleifera)は,熱帯・亜熱帯地域に分布する樹木であり,葉,莢,種子が食用として使用されている.我々は,日本の代表的な発酵食品に使用されている種麹,Aspergillus sojae (AS),A. oryzae (AO),A. kawachii (AK)で発酵させたモリンガ種子(モリンガ麹AS,AO,AK)の機能性成分を報告した1).本研究では,発酵条件の違い(好気・嫌気)によるモリンガ麹の機能性成分の比較を行った.【方法】脱皮したモリンガ種子を希酢酸溶液に浸漬後,蒸煮,冷却したものに種麹(AS,AO,AK)を植菌し,32℃,70時間好気発酵を行ったもの, 32℃,45時間好気発酵後に嫌気条件で32℃,25時間発酵を行ったものを調製した.加熱殺菌処理後に凍結乾燥し,粉末にしたもののアミノ酸組成,総ポリフェノール含量,抗酸化活性,アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性,キチン結合活性を分析した.【結果】総遊離アミノ酸含量は,モリンガ麹ASが最も高く,好気発酵のみでは未発酵種子と比べて約3倍,好気+嫌気発酵では約6倍増加した.一方,総ポリフェノール含量は,モリンガ麹AOが最も高く,好気発酵のみでは未発酵種子と比べて約40倍,好気+嫌気発酵では約30倍増加した.抗酸化活性においても同様の傾向が見られた.ACE阻害活性(IC50値)は,好気発酵のみでは未発酵種子と比べてモリンガ麹ASとAOで約1/7,AKでは約1/5となり,好気+嫌気発酵でもほぼ同様の結果で,発酵条件にかかわらずACE阻害物質が同程度作られていると考えられた.また,キチン結合タンパク質は,全てのモリンガ麹にほぼ残存していた.これらの結果より, QOLの向上,血圧降下作用,抗真菌作用などの機能性成分を豊富に含む新たな発酵食品となる可能性が示唆された.1) 日本農芸化学会2024年度大会