日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[3Cp] 食品分析

2024年8月31日(土) 14:15 〜 17:00 C会場 (3F N323 )

座長:仲川 清隆(東北大学)、松田 寛子(日本獣医生命科学大学)、間野 博信(あいち産業科学技術総合センター)

14:30 〜 14:45

[3Cp-02] 蛍光指紋法による保存中の清酒の評価と熟成成分の推定

*近藤 徹弥1、三井 俊2、伊藤 彰敏2、伊東 寛明2 (1. 名古屋文理大学、2. あいち産科技総セ・食工技セ)

キーワード:蛍光指紋、清酒、熟成

【目的】若々しい香りと荒々しい味わいが特徴である搾りたての生酒は,火入れ・貯蔵中に熟成して,味や香りが調和し落ち着いたまろやかな酒質になるが,適切な管理をしないと劣化につながる.熟成・劣化の程度は,清酒に含まれる成分と貯蔵条件によって大きく変わる.その変化を予測することは熟練の酒造技術者であっても難しく,清酒の状態を簡便に見極める技術が求められている.そこで本研究では,複雑な前処理をせずに膨大な情報(EEM,3D-蛍光スペクトル)が簡便に得られる蛍光指紋法を用いて,様々な温度で保存した清酒のEEMと保存条件との関連を評価するとともに,熟成成分の濃度推定への適用について検討した.
【方法】食品工業技術センター及び酒造メーカーから入手した清酒20点を4~45℃の範囲で最長52週の保存試験に供した.経時的に取り出した試料(計389点)について,熟成や劣化の指標成分とされるHarmanやMTCA等を蛍光-HPLC法で定量した.さらに,励起波長 (Ex)を200~500nm,蛍光波長 (Em)を210~600nmの範囲でEEMを測定した.
【結果】EEMのパターンは,温度や保存時間とともに変化した.4~25℃における保存では,温度が高くなる,あるいは保存時間が長くなる程,Ex/Em=345/529 nm付近の蛍光強度が増加した.一方,45℃での保存では,保存時間とともにEx/Em=295/367 nmの強度が減少し,360/420 nmの強度は増加した.345/529 nm付近の強度は増加した後,減少に転じた.EEMに出現するこれらの蛍光強度ピークの位置と清酒に含まれる既知の蛍光成分との比較から,Tyr,Trp,Harman,MTCAの帰属が推定された.部分的最小二乗法を用いてEEMからHarmanとMTCAの濃度推定を試みたところ,良好な結果 (検証データにおける決定係数 >0.8)が得られた.