日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

C 農畜水産物とその加工品 (Agricultural product, Livestock product, Seafood, and their processed products)

[3Ia] 畜産物、乳製品

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 I会場 (3F N302)

座長:大沼 正人(北海道大学)、谷本 守正(東京聖栄大学)、荒谷 陽介(北海道立食品加工研究センター)

09:00 〜 09:15

[3Ia-01] 金属共存が及ぼす各種家禽オボトランスフェリンの
加熱凝集・溶解性への影響

*鈴木 歩美1、梶野 涼子1、竹嶋 伸之輔1、栗﨑 純一1 (1. 十文字学園女子大)

キーワード:オボトランスフェリン、各種家禽卵、加熱安定性

【目的】ニワトリChiオボトランスフェリンOTrfは卵白中最も加熱感受性が高い主要成分で,金属イオンが配位することにより加熱安定性が変化することが知られている.以前,Chi OTrfと他の5種の家禽;アヒルDuk,ホロホロチョウGui,ウズラJpq,ダチョウOst,シチメンチョウTkyについて,金属共存時のOTrfの加熱変性温度に関する比較研究を報告したが,今回は,加熱凝集抑制効果について比較解析した.
【方法】加熱凝集・溶解性は,各家禽OTrf溶液(pH 8,pH 9)1 mg/mLについて,Fe3+またはAl3+イオン共存下,30~95℃の実験条件で,加熱時間を変えて溶解性を測定(280 nm)し家禽間で比較した.各家禽OTrfの加熱凝集に関与する分子間相互作用は,加熱後の凝集物または溶液をSDS-PAGE分析にて比較解析した.
【結果】加熱凝集・溶解性は,Fe3+イオン共存OTrfでは,Fe3+フリーOTrfよりどの家禽でも凝集・不溶化が進みにくく,95℃,20分の加熱でも,16~70%可溶性が向上しており,加熱凝集抑制効果が認められた.また,Fe3+イオン共存時の加熱変性温度の上昇効果はどの家禽でも20℃以上と家禽間で差がないのとは対照的に,加熱凝集抑制効果には家禽間で差がみられた.とくにpH 9(95℃,20分加熱)のGui及びTky OTrfはFe3+フリーのときと比べて,約70%溶解性が向上しており顕著な加熱凝集抑制効果を示した.pH 9(95℃,20分加熱)におけるAl3+イオン共存下では,Gui及びTky OTrfがAl3+フリーのときと比べて30~40%溶解性が向上し,Fe3+イオン同様に,加熱凝集抑制効果が認められた.なお,各家禽OTrfの加熱凝集物及び加熱後溶液中のOTrfポリマーの形成には,共に疎水結合に加えて分子間S-S結合が関与していることがわかった.