日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

C 農畜水産物とその加工品 (Agricultural product, Livestock product, Seafood, and their processed products)

[3Ia] 畜産物、乳製品

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 I会場 (3F N302)

座長:大沼 正人(北海道大学)、谷本 守正(東京聖栄大学)、荒谷 陽介(北海道立食品加工研究センター)

11:15 〜 11:30

[3Ia-09] GC/MSおよびQDAから評価した乳製品の添加によるコマツナ青汁の苦み抑制効果

猪飼 ゆい1、上妻 あや1、中村 海里1、西岡 実優1、荒木 萌1、*谷口 明日香1、小石原 洋2、田中 麻里子2、橋本 一平2、佐瀬 睦子2、佐藤 吉朗1、重村 泰毅1、小林 理恵1 (1. 東京家政大学、2. 森永乳業(株))

キーワード:乳成分、牛乳、葉菜類、苦味抑制

【目的】アブラナ科の野菜であるコマツナは,カルシウムや鉄分を豊富に含む一方,特有の苦みがあり,これにより好まれないことがある.そこで,風味のマスキング効果が知られる乳製品(加工乳)の添加により,コマツナの苦みを抑制できないかと考えた.本研究では,乳成分のうち乳たんぱく質,乳糖および乳脂肪に着目し,それらの含有量の変動に伴うコマツナの苦みの変化を分析型官能評価と機器測定より評価した.
【方法】コマツナと乳製品を合わせた風味を簡便に評価するため,青汁を試料とした.コマツナはスロージューサーを用いて絞ったのちガーゼで濾して青汁とした.乳たんぱく質および乳糖は各種溶液、乳脂肪は乳脂肪量を変えた加工乳を用い,各乳成分濃度を3区分に調整した.青汁と各種溶液または加工乳を4:1で混合し,評価試料とした.官能評価では,言葉だしにより嗜好にポジティブまたはネガティブに働くと考えられる味質を抽出し,それぞれの強度について青汁単体を基準としたラインスケールにて評価した.機器測定では,アブラナ科の辛味成分であるアリルイソチオシアネート含量をGC/MSにより測定した.
【結果】官能評価にあたり青汁の特徴について言葉だしをした結果,コマツナ特有の苦みは酸味・渋味・辛味に分けられ,好ましい味として甘味・うま味も感じられた.よって,これら5項目を評価項目とした.乳たんぱく質含量が変動してもいずれの味質も強度は変わらず,乳糖含量の変動では,乳糖の増量に伴い甘味の強度は有意に増強したものの,それ以外の味質に有意な差は認められなかった.一方,乳脂肪においてはいずれも有意な変化が見られ,乳脂肪の増加に伴い酸味・渋味・辛味は抑制され,甘味・うま味は増強した.さらに,アリルイソチオシアネート含量も低下しており,辛味成分も減少した.以上より,乳成分の中でも乳脂肪の添加により,コマツナの苦みの抑制が可能であると考える.