日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

D 食品工学、加工、保蔵、バイオテクノロジー (Food Engineering, Process, Storage, and Biotechnology)

[3Na] 食品物性、嚥下、咀嚼機能

2024年8月31日(土) 09:00 〜 11:30 N会場 (2F N202)

座長:三浦 靖(岩手大学)、庄司 真樹(宮城大学)、長谷川 摂(あいち産業科学技術総合センター)

09:30 〜 09:45

[3Na-03] 荷重と加速度のデータに基づく咀嚼時の食感変化の推定

*青木 尊啓1、中本 裕之1 (1. 神戸大学)

キーワード:食感、計測、推定

【目的】人が知覚する食感は咀嚼中,継続的に変化している. 食品が口に入れられてから飲み込まれるまでに,食品の構造は分解され,唾液と混合し,嚥下するための準備が行われる.本研究では,このような咀嚼の過程を想定した食感計測器による計測を実施し,その計測データから咀嚼中の食感の変化を定量的に推定することを目的とする.
【方法】食感の支配率を目的変数,食感測定器の計測データから算出した特徴量を説明変数として,状態空間モデルによる咀嚼過程の食感変化の推定を試みる.状態空間モデルはある時点までの変数を用いて,次の時点の推定を繰り返すモデルとなる.実験対象には7種類の食品と,10種類の食感表現を選定した.始めにTemporal Dominance of Sensations(TDS)を用いた官能評価を行い,被験者10名の食感の支配率の変化を取得する.次に6軸力覚センサと3軸加速度センサを備えた食感計測器を使用し,食品を圧縮した際の荷重と加速度を計測する.圧縮回数は10回と設定し,1回圧縮する度に唾液を想定した水を加えていく.Texture Profile Analysisを参考に,荷重のデータを2回圧縮毎のデータに分割し,Texture Profile Analysisを参考に6つの特徴量を算出する.加速度のデータからはピーク値やピーク数,合成加速度を特徴量として算出する.最後に状態空間モデルによる推定を行い,推定値と官能評価の結果を比較する.
【結果】官能評価では,咀嚼の前半では食品毎に異なる食感,唾液と食品が混ざる咀嚼の後半ではねちゃねちゃやべちゃべちゃといった食感が支配的であった.計測データの特徴量は食品毎に異なる値となった.推定値の変化は官能評価の支配率の変化と同じ傾向であった.荷重のみと比較し,荷重と加速度の特徴量を用いると推定精度が向上した.