日本食品科学工学会第71回大会

講演情報

一般講演

A 食品成分,食品分析(Food Ingredients, Food Analysis)

[2Ap] 栄養成分(タンパク質,炭水化物,脂質,ビタミン,ミネラル)

2024年8月30日(金) 15:00 〜 18:00 A(S2)会場 (3F N321)

座長:菅原 達也(京都大学)、友寄 博子(熊本県立大学)、宗 伸明(佐賀大学)

16:00 〜 16:15

[2Ap-05] LC-MS/MSを使用した食品中のピロロキノリンキノン分析における抽出および精製時の回収率の向上

*平川 祥成1,2、加藤 主税3、藤田 和弘1、三毛門 毅4、仲川 清隆2 (1. (一財)日本食品分析センター、2. 東北大院・農、3. 静岡大院・農、4. 三菱ガス化学(株))

キーワード:ピロロキノリンキノン、食品分析、LC-MS/MS

【目的】ピロロキノリンキノン(PQQ)は,酸化還元酵素の補酵素として知られ,ビタミンB様物質として注目を集めている.ヒトにおけるPQQの栄養学的な役割を知るためには,日常摂取量の確認が必要である.しかし,摂取源と考えられる食品中のPQQ量は微量で反応性も高いため,正確に定量するのは極めて困難である.私たちは最近,極性の高いPQQの保持に優れたカラムを見出し,夾雑成分との分離を改善し,LC-MS/MSを用いてより正確に定量できる分析法を開発した.しかしながら,一部の食品で抽出・精製時の回収率が低く,本法を適用できる検体が限られていた.そこで,本研究では,回収率を向上させ,幅広い食品に適応できる方法の確立を目的とし検討を行った.
【方法】試料に内標準物質を加え,EDTAとアスコルビン酸を含む60%アセトニトリル溶液を抽出液とし,10分間振とうしながら抽出した.抽出液をOasis WAXに供し,溶出液を酢酸エチル/アセトニトリルに転溶して,LC-MS/MSで測定した.カラムはCOSMOSIL 3PBrで,移動相には100 mM酢酸アンモニウム水溶液とメタノールのグラジエント溶出を採用した.MSのイオン化はESIネガティブモードとし,SRMで定量した.
【結果】回収率が低い要因は,金属とのキレートや反応性に富んだオルトキノン構造が関係している可能性がある.これらの反応を防ぐために,抽出液にEDTAとアスコルビン酸を加えて内標準物質の回収率を評価した.その結果,EDTA(4 mM)とアスコルビン酸(16 mM)を含む抽出液を使用することで,ほうれん草の分析時の回収率が約5%から約60%に大幅に改善した.さらに,抽出回数を2回にすることで,90%以上の回収率が得られた.今後はほうれん草に加えて,様々な食品のPQQを定量し,我々が摂取している量を正確に把握するための研究を進めていきたいと考えている.